seized with fear
第二の課題は水魔と戦うものです。
その際、選手は人質にとられた恋する人や友人、家族を助けるのですが。
……なぜ、私が人質のために呼ばれたのか本当に、意味が分かりません。
第二の課題が行われる朝に私が大広間で食事をしていると、私は寮監であるスネイプ先生に呼ばれました。
私は何事かと思いましたが、怪訝そうな顔つきのスネイプ先生に従い一つの部屋へと付いて行きますと。
そこには私の他にも先生方や三人の校長、三大魔法試合の運営委員の大人たちがいました。
そして、私と同じ生徒として可愛らしいの女の子、ハーマイオニー・グレンジャー、ロン・ウィーズリーがいました。
私はそれを見て、原作の知識と目の前の光景を頭の中で重ね合わせまして、回れ右をして逃げたくなりました。
もちろんそんな事はしませんが。
体を巡る血液が一気に冷えたのは気のせいではないでしょう。
私が部屋へ入ると、ダンブルドア校長は私たち生徒にこれから代表選手の人質になるのだと説明しました。
チョウがいないので予想はしていましたが、私はセドリックの人質のようです。
バグマンのおしゃっる話によりますと水の中で選手を待つことになりますが、溺れることは無く水魔にも交渉してあるから君たちは安全だということだそうです。
ですが、私はそんな事よりもなぜチョウではなく私が選ばれたのだと意味が分かりませんでした。
私にも分からないので、スネイプ先生は隣で私を怪訝そうにじっと見下ろすのを止めて頂きたいです。
私は試しにダンブルドア校長に人質になりたくない、と伝えますと。
彼は申し訳なさそうな顔を作り、「今から別の人質を用意するにも時間がかかるからのう。すまんが受けてはくれないかね?」と逆に尋ねてきました。その無駄に長い髭をむしりたいです。
…私が、セドリックの人質選ばれてしまったのは何がいけなかったのでしょう。おかしいです。ありえません。
セドリックとホグズミードに行ったせいでしょうか。
ですが、それならセドリックとよく一緒にいる同じ寮の方の方が選ばれるはずです。
私が他の人と異なる事というと。まさかダンブルドア校長に未来の知識があるのを知られてしまったのでしょうか。
……いえ、閉心術の練習の際にスチュワートに知られてしまった可能性はありますが。スチュワートがわざわざダンブルドア校長や他の人に伝えるとは思いません。未来を知っているからといって人質にされる理由もありませんしね。
本当に、なぜなのでしょう。
ですが、これで少し原作から逸れてしまいました。ここに来る前に断れたのでしたら良かったのでしょうが。
…どうしましょう。
やはりここは嫌だと言ってチョウに代わってもらうべき…、いえ、この時点での変更は…。
今断っても私を不思議そうにチラチラと見てくるロンやハーマイオニーはハリーに伝えてしまうかもしれません。
そもそもここでチョウに代わって頂いて、原作へとまた修正できるのでしょうか。
「ダンブルドア先生、私は本当に人質をやりたくありません」
迷って私はダンブルドア校長にそう強く告げました。
少しだけ声が震えてしまいました。
私は自分でも分かるくらいに混乱しています。
原作が変わるかもしれないことがとても怖かったのです。
ダンブルドア校長はキラキラとした目で人質を断った私を見つめます。私はもう閉心術を使えるので、無理やりでない限り心が読まれる心配はありません。
ダンブルドア校長は私を見つめたあと、残念じゃのうと言い強要はしませんでした。
彼はすぐにチョウを呼んでくるようにレイブンクローの寮監へと告げたので。
私は先生方へ軽くあいさつをして踵を返し、足早にたくさんの視線が突き刺さる部屋から出ました。
もっとはやくに、部屋に入る前に人質として呼ばれたと気づけば良かったです。
よほど私の顔色が悪かったのでしょう。
私について部屋から出たスネイプ先生は私を地下の魔法薬学の教室の横にある彼の仕事部屋へと招くと、温かい紅茶を出してくれました。
それからすぐにスネイプ先生は課題の準備があるからと出て行ってしまったので、忙しい中紅茶を用意してくださったようです。
スネイプ先生はスリザリン生には優しくして下さいます。
私たちにとっては本当に良い先生です。
だからスチュワートもドラコもスネイプ先生にとても懐いています。
ハリー・ポッターに対しての冷たさも愛情の裏返しでしたしね。
紅茶は少し独特な風味で美味しかったです。
けれど、温かい紅茶は不安でいっぱいになっていた私の胸を温めてはくれませんでした。
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