prologue:a

 はじめまして。

 今世での私の名前はミリア・ファストといいます。


 今世はとは不思議な言い方をする、ですか?
 けれどそれは私にとって正しい言い回しなのです。 


 20世紀のミリア・ファストとして生まれる以前、私は21世紀の時代を生きていました。

 つまり私は未来から過去へと生まれ変わったということになります。



 しかも私の今世はもともと住んでいた世界とは異なる、魔法のあるファンタジーの世界でした。


 私が生まれたばかりの頃、初めて母親に抱かれて自分の家となる古くて大きな屋敷に着くと、ただでさえ大きいと思っていた屋敷が地面からまるでウツボが穴の中から飛び出すようにニョキニョキと巨大な姿を現しました。


 これには思わず赤子ながら現実逃避をしました。


 母親に抱えられ屋敷へ入ると、屋敷の中では飛行するはずのないものが飛び交い、飾られた絵は意思を持って動き、屋敷しもべ妖精たる生き物が召使いとして家の世話をしていました。 



 父と母が魔法使いであったと気がついたのはそのときです。




 そんな理解不能な環境で私は健康的に育ちました。確かに魔法は便利でしたが、子供のうちは魔法を使うのを禁止されていたので、魔法使いの子とはいえ魔法を使う事はありませんでした。

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