Christmas dance party3

 セドリックは座る私を引き締めた表情で一度じっと見下ろすと口を開きました。


 「その…この間はごめん」


 そういうとセドリックは私に頭を下げました。


 そのセドリックの言葉に私は少し動揺しました。

 この間のこととは廊下でダンスパーティーについての話の事でしょうが。
 それなら彼がなぜ私に謝るのか分かりません。


 「あの時は自分勝手に僕はミリアを責めて…君はなにも悪くないのに、僕が早く君を誘わなかったのが悪いかったのに。君を責めてしまってごめん」


 どうやら、私がセドリックの誘いを断ってそれについて怒ってしまったことを気にしていたようです。


 そんなこと気にして下さらなくても構いませんのに。セドリックは律儀な人ですね。


 「……いえ、私はなにか貴方を怒らせるような事を言ってしまったのでしょう?私はあまり人の気持ちを察っすることが得意ではありませんし」

 「いや、本当に僕が勝手に怒っただけだよ。ミリアは悪くない。僕が…僕は浮かれていたんだ。君をホグズミートに誘えて、第一の課題もクリアできた事で気が大きくなっていたみたい」


 今にもなきそうな表情で微笑むとセドリックは言いました。よほどずっと気にしていたのでしょう。




 …それにしても、周りに誰もいないでしょうか。

 今は周りに誰もいないようですが、ダンスパーティーでこうやって2人で話しているところを誰かが見ていたら困ります。


 私はいつまでいるつもりかとセドリックへ視線を向けますと。
 セドリックはそれに勘違いをし、話を続けるようにとでも受け取ったようで言葉を続けました。


 「ごめん、ミリア。僕を嫌いにならないでほしい」

 「貴方を嫌いに?」

 「ああ。嫌わないで、ミリア」


 セドリックはまるで縋るようにまっすぐと私を見つめますので、私は答えました。



 「……セドリックを嫌いになんてなりませんよ」


 私ははっきりとそう言いました。

 セドリックは関わりたくない対象ですが、私がセドリックを嫌いになる事はありません。


 今回の事でしたらセドリックが怒っていたのはおそらく私に原因があるのでしょうし。
 それなのに怒って嫌いになるなんて幼稚なことはしません。


 …そもそも私は、関わりたくない人はたくさんいますが嫌いな人は少ないと思います。
 私はだいたいの人が嫌いになるほどの興味はありませんから。


 だから嫌いではないとセドリックへ言いますと。

 セドリックは顔を悲しそうに戸惑うように歪めて私の名前を呼び、突然私の肩に顔を埋めるときつく私を抱きしめました。

 彼の肩は震えていました。


 「ありがとう、ミリア。ごめん」


 セドリックはか細い声で弱々しくそう言うので、私は意味が分からなくされるがままになりました。


 急に抱きしめられてびっくりしましたが。それよりこんなところ、チョウに見られたらどうするのでしょうか。




 …いえ、それよりも。セドリックが壁になっていて気がつきませんでしたが。
 すでにスチュワートは飲み物を持って来ていたようです。


 スチュワートは離れた建物の壁に寄りかかり、持ってきたシャンパンを飲みながらこちらをどうでも良さ気に見ていましたので、私は軽く彼を睨みつけました。




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