after the first game

 スリザリン寮に戻ると、スチュワートが1人ソファーで本を読んでいました。

 寮には現在私とスチュワートしかいません。なぜかというと、今は三校対抗試合の第一の課題の真っ最中だからです。

 一生に一度観られるかどうかであろう試合を観戦しない人など私と彼くらいのものでしょう。
 だから学校内にいる人間も私とスチュワートだけだと思います。


 「おかえり、ミリア。早かったな」

 「スチュワート、貴方は行かなかったのですね」

 「当たり前だ。ミリアもこの時間にいるということは行かなかったのか?」

 「いいえ、行ってきました」

 「それにしては始まった時間から一時間も経っていないように思えるが」

 「一人目だけ観てきましたから」


 私は結局セドリックに言われた通り、試合を観に行きました。
 とは言っても思ったとおりに防音機能付きの耳当てを持参したにも関わらず煩かったので、セドリックの試合だけ観て戻ってきました。

 課題はドラゴンが守る金色の卵を取るという原作通りのものでした。セドリックは転がっている石を犬に変えると、それにドラゴンの注意を引き付けその間に卵をとりました。

 ただ、途中でドラゴンに炎を浴びせられ火傷を負っていましたが。

 ドラゴンという不確かな情報だけで課題を乗り越えたセドリックには感心しました。選手の中で彼が一番情報も助けもなかったはずです。それをあそこまで臨機応変に対応できるのは彼より長く生きている私にもできません。


 ・・・私なら、この試合どうしていたでしょうか。まあ、これからの人生でドラゴンなど相手にする予定はないのでその仮定は無駄なものですね。


 「ドラゴンはどうだった?」

 「課題はドラゴンだと知っていたのですか?」

 「あんなに森の中で鳴き声が煩かったら気がつくだろ」

 「・・・・スチュワートは耳が良いのですね」

 「?聴覚は普通だと思うけど」


 私はくわしい場所は知りませんが、普通は選手に課題がバレることのないように遠くにドラゴンを準備してあるはずなので聞こえるわけがありません。
 それに生徒の誰も聞こえたという人などいませんでしたし。

 「もしかして、今も試合の音が聞こえますか?」

 「聞こえる訳ないだろう。どれだけ会場が離れていると思っているんだ」


 スチュワートは意味が分からないといった様に首を傾げました。意味が分からないのは私の方ですが。
 とはいえ、お互いが意味が分からないのに実のある話ができるとは思わないので私は話を戻すことにしました。

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