スチュワートと立候補
「バックス先輩は三大魔法学校対抗試合に立候補するおつもりですか?」
スチュワートが寮の談話室で本を読みながら寛いでいると、ドラコが話しかけてきた。
その話し方は嫌味っぽく、言外に『先輩が代表選手に選ばれるなんてドラゴンがコサックダンスをするくらいありえない』と言ったような口ぶりだ。
「もちろんしないよ」
スチュワートは本からドラコに視線だけを移すと即答した。
ドラコの嫌味をスチュワートはまったく気にしていなかった。自分でも立候補することなどありえないとスチュワートは思ていた。スチュワートには目的も意味も何も無い。
確かに親は立候補しろと言ってきてはいるが。親の言うことだからとすべてに従うつもりもない。面倒臭いので親には立候補したが駄目だったと言うつもりでいる。
「ふん、それが賢明だと思いますよ。」
そうは言いながらも、ドラコは複雑そうな顔をして自分の部屋に向かって去って行った。
ドラコが複雑そうな顔をしたのは言葉の通りの思いとスリザリン生として立候補しない事への憤りが彼の内心で複雑に交わっているからだと、スチュワートは当たりをつけていた。
なんだかんだで、スチュワートはドラコが自分にとても懐いていることは知っている。
今話しかけてきたのも自分を心配も含んでいたことだろう。
あの白イタチ騒動の羞恥心から自分を避けていたドラコが、今日は意を決して話しかけてきたことが何よりの証拠だ。
嫌みったらしくしか言えない、彼の不器用さは可愛らしいと思っている。
出会い頭はどうでも良い後輩だったが、現在はスチュワートにとってドラコは可愛い後輩だった。
ドラコが去るのを見送ってからスチュワートは考えた。そういえばミリアは立候補するのかと。けどすぐにその考えが馬鹿馬鹿しいものだと思った。
・・・彼女の性格からして、参加するわけが無いな。
そう判断して、スチュワートは再び本へと視線を戻した。
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