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 「やあ、ミリア」


 新学期から少し日の経った夜、廊下を歩いているとセドリックに声を掛けられました。セドリックと面と向かって会うのはクィディッチ・ワールドカップ以来なので一ヶ月ぶりです。
 セドリックは私の歩みを制するように自然な動作で立ちふさがったので私は歩みを止めました。


 「何か用でしょうか、セドリック。」


 普段なら軽く避けていたところですが、クィディッチを教わった恩もあるので私は話を聞くことにしました。
 話を促す私にセドリックは嬉しそうに笑いました。おそらくセドリックが犬なら尻尾を振っていたでしょう。そんな表情です。


 「君は、三校対抗試合に立候補するかい?」

 「いいえ」


 私は即答しました。
 参加などするつもりはありません。参加する意味も分かりませんし。ドラゴンや水魔と戦うなんて無理です。やる気もありません。


 ・・・とは言えまったく参加することを考えなかったワケではありませんが。
 いえ、この話はどうでも良いことです。


 「貴方は立候補をするのですか?」

 「そのつもりだよ。・・・とは言っても選ばれる自信は無いけどね。」

 「そうですか」


 原作の通りにセドリックは立候補をするようです。
 セドリックは自信が無いようですが、むしろセドリックより選ばれる可能性のある人の方が大差で少ないと思います。あの双子がたとえ年齢を誤魔化してゴブレットに名前を入れられたとしても、選ばれたのはセドリックでしょうし。


 セドリックが私に話しかけたのは次点である私が試合に参加をするのかの確認でしょう。おそらく私もゴブレットに名前を入れれば選ばれる可能性は次点ですので有り得ないこともないでしょうし。
 私のようなモヤシが選ばれる訳がないではないか、と思われる方もいらっしゃるでしょうが。私は学校に入ってからクィディッチの選手には遠く及びませんが、ある程度体を鍛えていますのでもうモヤシではありません。鍛えたのはこの学校では階段やらが動きますので飛び乗った方が楽なことや、面倒なものに遭遇した時にいち早く逃げるためです。
 

 「そう。それでセドリック、あなたが私に聞きたかったことは私が立候補するかどうかだけですか?」

 「え、ああ、うん。」

 「なら話は終わったようですので、私は寮に戻ります。おやすみなさい、セドリック」


 セドリックはまだなにか言いたそうでしたが、私はそれに気が付かないフリをして寮へと歩き出しました。
 歩き出すと後ろから「おやすみ、ミリア。」と声をかけられ、自分でも何故かは分かりませんが無性にため息を吐きたくなったので我慢しました。







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