train1

 夏休みも終わり。
 私はホグワーツ特急に乗るために電車を乗り継いでキングズ・クロス駅まで来ました。

 テールの姿現しを使い直接駅へ行っても良かったのですが、私はなるべく姿現しという手段を使いたくないので電車を使いました。

 だって、失敗して体の一部が置き去りになるとか嫌じゃないですか。テールの事を信じていない訳ではないですが。


 テールには荷物を持って先に行って貰っていたので。テールは私が3/4番線ホームに入るとチョコチョコと荷物の乗ったカートを押して私のところまで近寄ってきました。


 「ありがとうございます、テール」

 「お嬢様。お礼など私めに必要ございません!」


 テールは耳を小刻みにパタパタさせて言いました。
 このパタパタは恥ずかしがっているということです。

 私はそれには何も返事をせずに微笑んで彼から荷物を受け取ると。テールに別れの挨拶をしてから、荷物を押して列車に乗り込みました。



 私はなるべく人の少ないコンパートメントを探して、幸運にもまだ誰も居ない部屋を見つけました。

 内心それにホッとして、まず自分がコンパートメントへ入ってから荷物を引っ張りこもうとしましたが車輪が動きませんでした。
 下を覗くとカートの車輪が入り口の溝に引っかかっているようです。

 ついていない、と思いながら車輪を外すために強く引っ張ろうとしますと、私がなにかをする前に自動的にカートが少し上へ上がり溝から車輪が外れました。

 少しだけ驚いて私の荷物の後ろに目線を移しますと、荷物を挟んで向かい側に厚い瓶底メガネを掛けて煩わしそうに、口をへの字にして立っているスリザリンの同級生”スチュワート・バックス”がいらっしゃいました。
 どうやら彼が私の荷物を押してくれたようです。


 スチュワートの雰囲気はスリザリン寮監のスネイプ先生と似ていると思います。
 黒髪で長めの髪も同じですし。一番の得意科目も魔法薬学で、それだけならスチュワートは私やセドリックよりも成績は上です。
 髪はボサボサで見た目がマッドサイエンティストに見える彼ですが、彼の存在感のある瓶底メガネを外して無精ひげを剃れば顔つきは良いので良い男になると思います。

 まあ、見目を良くしようとかそんなことに彼は興味もないでしょうが。


 「ありがとうございます、スチュワート。」

 「いや。」


 おまけに、スチュワートは気の向いた時にしか喋りませんし、普段は顔も口以外ほとんど動かない人です。

 喋る時はたまに長く話しますがそのテンションの浮き沈みが今でもよくわかりません。
 なので7年間彼と一番長く供にいた私でさえ、何を考えているか読めません。

 供にいたと言っても、私も彼も人付き合いをほとんどしないので。ただ、自然と授業でペアを組む時にペアになる為です。
 

 スチュワートは私がコンパートメントに入るのと一緒に荷物を持って入ってきました。
 どうやら彼もここにするようです。




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