World CupY
セドリックと話をしながらそれにしても、と私は思いました。
セドリックはなぜここまでしてくださるのでしょう。他の寮の、しかもスリザリン生に。
たしかに昔私が迷子の彼を助けたようですが、それにしても律儀過ぎると思います。そんな律儀なところも、私は原作で知っていましたが・・・・。理解できません。
「・・・セドリックは本当にお優しいですね」
「え?」
「私、貴方に結構冷たくしていると思いますのに、このように時間を割いてまでクィディッチを教えてくださいますし」
基本的に自分の損得でしか動かない私には、本当に思いやりや優しさで動く人の気持ちがイマイチよく分かりません。
とは言ってもこの生き方を変えるつもりは毛頭ありませんが。
「・・・・・・・僕は優しい訳じゃないよ。むしろ僕より君の方が優しいと思う」
「セドリック?」
セドリックは真剣な表情で私を見つめ、私が優しいと言いました。
・・・・・・眼科をオススメしましょうか?
とは口には出しませんでしたが、本当に勧めたかったです。意味が分かりません。
どこに私が優しい要素があったのか気になります。出会いの事でしょうか?
もしそうならばあれは勘違いですよ、と言いたいです。
私はセドリックがどう勘違いをしているのか分からないので言えませんが。
「・・・僕は優しくなんてないよ。ただ、僕が君にやさしいのは僕は君を「おーい、セドリック!!」」
セドリックの言葉は、セドリックの名前を呼ぶ声に遮られました。
そちらを見ると、私達と同い年くらいの男の子と女の子達がスタンドの上の方に立っていました。
たしか彼らはセドリックと同じ寮の人たちです。
普段からセドリックを取り巻く彼らはいつも私の事をジロジロ見てくるので覚えていました。
そして、現在も私はジロジロと見られています。こうやって見られるのはおそらく私がスリザリンだからでしょうが。
非常に居心地が悪いと感じました。
「呼ばれていますね」
「・・・・そうだね」
「では、邪魔をしては申し訳ありませんので。私たちはそろそろテントへ戻ります」
私は立ち上がりました。
まだ試合まで時間はありますが、セドリックもどうせなら私よりも同寮の人達と過ごしたいでしょうし。
「え、いや、別にいいよ。君は邪魔じゃない」
「気を遣って下さらなくても構いませんよ。せっかく同じ寮の方と会えたのですから、私の事は気になさらないで下さい」
「ち、違う。僕は君とっ」
「お嬢様それでは、参りましょうか。試合観戦の準備も必要な事ですし」
セドリックが私に何か言いかけたので首を傾げると、テールが私とセドリックの間に入り込み私に言いました。
セドリックと話している間、テールはずっと隣で黙ったままでした。
おそらく、私が学校の人と話しているのに気を使ったのだと思いますが。
・・・・そういえばこうやって同級生と話すときにテールを同席させたのは初めてだったなと思いました。
それで緊張をしていたのでしょうか。
「ええそうね。セドリック、クィディッチを教えて下さり本当にありがとうございました」
ではまた学校で、と言うとセドリックは何か言いたそうでしたが、彼は何も言いませんでした。
私は不思議に思いはしましたが、テールは私の手を引っ張り戻ろうとしたので。私はセドリックに会釈をしてそれに従いました。
セドリックが悔しそうな顔で私の背中を見つめ、テールがそんなセドリックを振り返り見てニヤリと笑んでいたことに、私が気がつくことはありませんでした。
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