World CupX

 私たちは夕暮れのオレンジ色に染まる競技場のスタンドへやってきました。

 私たちというのは、私とテールとセドリックの三人です。

 まだ試合が開始される夜まで時間があるというのに、スタンドはだいぶ混みはじめていました。

 お互いのチケットを確認すると私たちの席はだいぶ離れているようで。セドリックは少し落ち込んでいるようでした。

 まあ、こんなに会場が広ければ席が近い確率はかなり低いでしょうが。




 それから私たちはスタンドの競技場がよく見える位置に行き、間にテールを挟みましてセドリックからクィディッチのことを教わりました。
 テールは進んでセドリックの隣へと行ったので、おそらくクィディッチのルールに興味があったのでしょう。
 私はセドリックの提案を受けて良かったと思いました。


 セドリックはさすがハッフルパフのメインシーカーを務めるだけあり、教え方は経験談も交えていてとても分かりやすいものでした。




 「ありがとうございました、セドリック。説明とても分かりやすかったです」

 「そうかな、それなら嬉しいよ」


 私たちは甘い飲み物が入ったボトルを片手に話しました。
 ちなみに、飲み物は私がスタンドに来た売り子から買ったものです。

 初めはセドリックが「自分が奢るよ」、と買おうとしていましたが。
 私は「御礼もあるので私がセドリックへ奢ります」と言い譲りませんでした。


 こういう時、本来ならば男の人は立てるようにと教わってはいましたが。私達はまだ学生ですし、これ以上彼に借りを作りたくはありませんので強引に買わせていただきました。




 「けれど、セドリックはよく私がクィディッチを知らないことを知っていましたね」

 「うん、試合で君の姿を見たことが無かったから。そうかなって」


 前にも述べたように、私は学校の試合を見たことはありませんでした。

 けれどセドリックは私が試合会場にいない事を知っていらっしゃった事に驚きました。

 とは言っても、逆にクィディッチを観に行かない方が少数派なので目立つのかもしれませんが。


 個人主義のスリザリンでさえ、一度も観に行ったことがないのは私以外で私の同級生の1人だけです。


 「そうですか。確かに私はクィディッチを観たことありません。これが初めてになります」

 「ミリアはクィディッチがあまり好きじゃないのかな?」

 「いいえ、嫌いと言うわけではありませんが。どちらかと言うと人ごみが嫌いなので」


 さすがにクィディッチの選手であるセドリックに興味が無いというのははばかられましたので言うのを止めました。

 人混みが嫌なのも理由の一つですし。ほとんど全校生徒が観覧する会場の混み様は半端ではありません、何よりも煩いです。
 


 「あぁ、そうだったんだ。ならミリアは今回、どうして観に来ようと思ったの?」

 「両親からチケットを頂きましたので。せっかくなので二人で来ることにしました」

 「二人?」

 「はい、私とテールの二人です」


 セドリックは驚いたように私達の間にいるテールを見ると、「ああ、そっか」と呟きました。

 セドリックの反応の意味は分かります。この世界ではしもべ妖精のために高いチケットを使うのは珍しいことのようです。


 というより、私くらいしかいないでのでしょうね。


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