執行人事件
※映画ゼロの執行人時の話注意
正体を明かしてからしばらくしての事です。
現在ニュースでIOTテロが騒がれていますが、ほぼ間違いなくコナン少年絡みなのでしょうね。
私の家には家電があまりありません。ネットと繋がっているものなど尚更です。
ホグワーツでも電化製品の持ち込みは禁止はされていませんでしたが家電が狂ってしまうことが多いのでほとんど持ち込んでいる人はいませんでした。
魔法と電化製品は相性が悪いのです。何故かという具体的な話は細かくなるので語りませんが。
ですので外で事故を見かけたくらいで携帯も故障しませんでしたし私に被害はあまりありませんでした。
けれど、やはり自分が持っていなくとも巻き込まれたら危険ですので私はこっそりと苦手な箒に乗って移動をしていました。もちろん見えないようローブも使っています。これなら何かがあってもすぐに誰かを助けられますし。
そんなメディアの騒がしい中私はたまたま道を飛んでいると対向車線でコナン少年がスケートボードに乗っているのを見かけました。そしてその後ろに白い車。
安室さんのものです。
彼らは道端で停まると話を始めました。
ですので私はローブをもう一度深く身に纏い近づき聞き耳を建てました。
やはり彼らはIOTテロを追っていることを知りました。
本当になぜこんなにも事件が多いのでしょうか。推理漫画の世界だからですね。
今回のこともきっと主人公のコナン少年がいるので大丈夫なのでしょうが。
慌てた様子で車とスケートボードで去っていく二人を見て。
やはり知り合いが危険な状態にあると無視はできませんでした。
私は成り行きを見守るべく二人を再び始まったテロによる事故から助けながらもこっそりと追いかけました。
それから、無人探査機の"はくちょう"がIOTテロを受け警視庁へ落下すると知り、犯人を追い詰め、警視庁の屋上まで行き、犯人を捕まえ一件落着とはいかずにまだ"はくちょう"が警視庁へ向かっているとのことでコナン少年や少年探偵団のみなさんで"はくちょう"を爆発させるのを静かに見守りました。
やけにあっさりしていると思いましたが終わりかと思いました。
けれど、"はくちょう"は軌道を変えただけでサミット会場の臨海区域エッジオブオーシャンへ落下しようとしているようです。そこには蘭さんやたくさんの人がいるそうです。
これも物語のうちなのでしょうか。それとも。
いくら大元が爆発して小さくなっていても、落下速度が少し減少していても、いち魔法使いの私では止めることは不可能です。
魔法だって力を使います。力は有限です。
それこそ死ぬつもりで太平洋側へ押し出すことならもしかしたら可能かもしれませんが。
ふと安室さんが私がいるこちらを見ました。
いつも私がいると悟られている気がします。
本当に正体をまだ明かしたばかりなのに。これなら魔女だと告白する必要がなかったのかもしれません。
本当なら黙っていなくなることが正しいと思います。無駄に傷つけたくはありませんから。
けれど、私はローブのフードを外して姿を見せました。
もしかしたら最後になるのかとおもうとただ寂しかったのです。
安室さんは私の姿に驚き目を見開きました。
けれど、安室さんが声を発する前に、私はバチンと音を立てて姿を消しました。
※※※※※
「ミリア!」
警視庁の屋上で僕は彼女の姿を見つけ、名前を叫ぶように呼んだ。
けれど、ミリアは僕の言葉を聞く前にその場から消えてしまった。
ずっとここにいたのか。
消える瞬間何かを怖れるように、泣きそうな顔をしたミリアが脳裏を過る。
それだけで何をしようとしているのか察してしまった。
「クソっ、まさか行くつもりか!」
彼女は魔女だといい不思議な力を持っている。おそらく今まで僕らの話を聞いていて"はくちょう"の落下を阻止すべく行ったのではないかと確信を持って予想した。
もしかしたらその力で"はくちょう"をなんとかできるから向かったのかもしれないが。
あの表情。嫌な予感しかしない。
僕は先に走り出した少年を追いかけた。
何もしてくれるなミリア。
※※※※
姿現しをしてエッジオブオーシャン まで来ました。
本当は高いところは苦手ですが、そんなわがままも言っていられません。
空の下では避難できていない人々がたくさんいます。
これならまだドラゴンと戦う方がマシな気がします。
いえ、嘘です。宇宙からの落下物もどちらも嫌です。
けれどさすがにまさかいつものようにコナン少年のサッカーボールでなんとかできるとも思えません。
私のちっぽけな魔法でもなんとかできる気もしませんが、やらないよりはマシでしょう。
一応これでも純血の魔法使いです。魔力はそこそこあります。
怖いですが。けれど何もしないという選択肢が思い付かなかっただけです。
数分して、ようやく"はくちょう"が視認できる位置まで来ました。
私は少しでも近寄るために杖を構え箒を走らせました。
お願いです。
うまくいきますように。
私は呪文を唱えようとしました。
すると私の横を空気を裂く鋭い音を立てて何か物体が通りすぎました。
………なんだかサッカーボールのように見えましたが。
サッカーボールのようなものは"はくちょう"に激突すると大輪の花火となり、爆発しました。
私は爆風と火花に当てられながらもそれにとっさに太平洋側へ飛ばすために魔法で補助をしました。
"はくちょう"は大きな水飛沫を上げて、海へと落ちました。
何が起こったのか本当に分かりませんでしたが、助かったようです。衝撃で怪我を軽くしましたが大したものではありません。
私はすぐに切れたカジノタワーのワイヤーを操り、下の人達を守ってからサッカーボールの向かってきた方向へ箒を走らせました。
どこからきたのかは軌道ですぐに分かりました。建築途中のビルです。
見覚えのある落ちた白い車で炎と煙は上がっていましたし、まだ破片を落とすガラスもありましたから。
もしかして死んでしまったのではと少しゾッとしましたが、まさかそんなはずがないと私は箒で旋回して安室さんを探しました。
そして非常階段で肩を怪我しているようで、一人肩をかばい下りる安室さんを見つけました。一目で危険な事をしていたと分かります。
「安室さん!」
私は降り立ち、箒をその場に捨てて駆け寄りました。
「ミリアさん」
安室さんも驚いた様子で私の方に少し足を引摺りながら近寄ります。
生きています。死んでいないとは思っていましたが、それでも良かったです。
「安室さん、無事で良かったです」
私は本当に安心して言うと、安室さんは私をキツく抱きしめました。
それに戸惑いますが、安室さんは離さないとばかりに力を込めているので逃げ出すことができません。
「無事で良かっただなんて、それは僕の台詞です。貴方を警視庁の屋上で見て、どれだけ心配したと思っているんですか」
強い口調で、優しい言葉を言ってくれる安室さんに思考が固まります。
やはり姿を見せずにしていれば良かったです。
「ごめんなさい」
「謝ってほしい訳ではありません」
「ですが」
「貴方が姿を見せてくれて良かったです。前ならきっと貴方は勝手に動いて知らない間に危険な目にあっていたでしょうから」
曖昧に謝る私へ、まるで私の思考を読んでいるかのように安室さんは的確に話します。
「僕はこの国を守りたいです。だから日本を守ろうとしてくれた貴方には感謝しています。けれど」
安室さんは抱きしめる私から少し離れました。
目の前に安室さんの綺麗な青い瞳があります。
そしてもう一度近づくと唇が重なりました。
突然のキスに驚き抵抗を忘れます。
「貴方だって守りたいんです」
キスの名残で唇を濡らしてそう熱い瞳で言う安室さんに私は返す言葉も思い浮かばずに瞳を揺らしました。
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[mokuji]