白雪の行方1

 突然ですが、私のこれまでの経緯を話します。
 ホグワーツを卒業した私はヴォルデモートとか言う面倒臭さから逃れる為に日本へと渡りましたら、そこは私の知っている日本とは似て非なるもので、つまりは少年漫画の名探偵コナンの世界の日本でした。
 何故分かったのかと言うと毛利小五郎がコスプレなどではなく普通にテレビに出ていたからです。

 それなのに私は現在米花町近くの東都大学へ通っています。

 だってまさかイギリスで留学生枠で受験した時はそこが名探偵コナンの世界だとは知りませんでしたから。もし知っていましたら少なくとも地方の大学を受験していました。


 そういうことで、名探偵コナンの世界なもののニュースなどではよく事件や怪盗が報道されていますが、大学生活を問題なく謳歌しています。



 いえ、していました。



 大学では名探偵コナンの世界であろうが普通の友達付き合いをしていました。

 その日は学科は違いますが同じ授業を取っている少し話すくらいには仲の良い同級生、沖矢昴と一緒に授業へと向かいました。

 そして、現在私は彼や複数の生徒と学校の講堂で、覆面を被って銃を持った男達に占拠されています。生徒は16人にテロリストは3人です。私達の腕は早々に縛られ、目隠しをされました。


 ここはどこの国でしたっけ?

 海外ではたまに報道されていますが、銃の所持が厳しく制限されているはずの日本でどのようなことでしょう。

 覆面の男の一人は電話でおそらく警察でしょうと話をしています。
 曰く、この腐った国を浄化するために腐った学生どもをこれから殺すという腐った頭達の動機らしいですが。

 彼らの目的が、金銭目当てだけでしたらまだ救いがありましたが、 全員殺す予定となると話は変わります。

 幸いにもこの講堂には防犯カメラもなく、窓も早々に厳重にテロリスト達が塞いで下さいましたので外に見られる心配もありません。

 ですので、こっそりと服の中に隠していた杖を手に取り、隣にいるはずの沖矢さんへ近寄り、彼を使い手を隠しながら縄を解きました。


 「さあて、まずは誰に尊い犠牲になってもらおうか」

 私が縄を解いたことに気がつかない男が目隠し越しなので見えませんが、ニタリと笑っているような声で私達へ近づいて来ました。

 危険ですが、今動かなければもっと危険でしょう。

 そして、この場で動けるとしたら魔法使いである私だけです。

 バチンッ

 私は姿現しをして講堂の隅へと移動し、目隠しを取りしました。

 いきなり消えた私にテロリスト達は戸惑った様子でしたが、すぐに私の居場所に気がつくと銃を私へ向けようとしましたので、私はその前に一人に無言で失神呪文をかけ倒し再び姿現しをしました。

 テロリスト達は私のいた場所へと銃弾を打ち込みますが私はもう彼の背後へ移動しまた一人へ失神呪文を掛けました。

 「貴様、何者だ!」

 残り、一人が銃を向け声を上げます。
 本当でしたらここでまた姿現しをして同じように彼も失神させるつもりでした。

 けれど。

 ドンッ

 いきなり足元から銃声がしたかと思うと、私の足に激痛が走りました。
 二人目に失神させたテロリストの銃が倒れた拍子に暴発したようです。その銃弾が運悪く私の足へと当たりました。

 崩れ落ちる私へ容赦なく男は発砲しようとしました。

 けれど、その前に私と一緒に人質になっていた体格の良い男が一人テロリストへとタックルをしました。それは私の隣で縛られていたはずの沖矢さんでした。

 彼もいつの間にか手に巻かれていた縄をほどいていたようで、隠されていた糸目の顔が露になり、どちらかというとインドアかと思っていましたが手慣れた様子でテロリストを床へ押さえつけ、テロリストの持っていた銃を遠くへやりました。

 これで全員倒せました。
 助かったようです。

 けれど、

 「ミリア!」

 沖矢さんが私の名前を呼ぶ声が聞こえました。

 「沖矢さんが、無事で、良かったです」

 倒れる私に駆け寄る怪我のない様子の沖矢さんを見て、思った言葉をそのままに。

 私は足から流れる血により貧血になり、その場で気を失いました。

[ 175/179 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]