パリス

 ※現世→ポケモン世界

 現代日本から転生して生れた先はポケモンの世界でした。ファンタジーですね。
 赤ん坊である私の横にポケモンがいたときはびっくりしました。
 私のポケモンの知識は初代だけです。けれど前世では可愛いポケモンは好きでした。
 特にピカチュウが好きです。可愛い。

 私が生まれた先は裕福な家庭でした。
 そんな私は父親に連れられ社交界に参加をよくしていました。

 そこで紹介されたのがデポン社御曹司ツワブキ・ダイゴさんでした。彼とは年が同じだったためプライベートでもよく会っていました。ダイゴさんは礼儀正しく紳士的で優しい子でした。

 ある日、私とダイゴさんは私の家の庭で二人で遊んでいました。


 「ねえ、ミリアってさ」

 「はい、何ですか」


 言い辛そうに下を見て言葉を濁す幼いダイゴさんを見つめ続きを促しますと、ダイゴさんは意を決したように顔を上げて私の目を見つめ言いました。


 「あのね、ミリアって石は好き?」

 「石、ですか?それは岩ポケモンのことですか?それとも単純な石のことですか?」


 突然の質問に私は首を傾げながらも尋ねますとダイゴさんは「どっちも」と言いました。


 「そうですね。岩ポケモンのことは可愛いと思いますが、単純な石については考えたこともありませんでした」


 イワークを持っている人に見せてもらったことがありましたが大きくてけれど頬擦りをしてきて可愛かったですし。女の子だと賛否が別れますが岩タイプの子は嫌いではありません。


 「そっか……」

 「そういう質問をするということはダイゴさんは石が好きなのですか」

 「う、うん。今まで言わなかったけどボク石を集めることが好きなんだ。けど分かってくれない人が多いから言えなくて」

 「いいじゃないですか。誰に言われようと好きなら好きで。そのくらいでダイゴさんのことを嫌いになったりしませんし。秘密にしなくてもいいです」

 「本当に?」

 「ええもちろんです」


 私がきっぱりと断定して言いますとダイゴさんは安心したように笑顔になりました。

 その日から彼は私に手に入った珍しい石を見せて下さるようになりました。



 それから数年後私とダイゴさんははじめのポケモンを貰える年になりました。

 「ミリアはやっぱりピカチュウをもらうの?ずっと好きだったよね」

 「はい。お父様がくださるそうです。ダイゴさんはダンバルでしたよね」

 「うん。すごく楽しみなんだ」

 「はい、私も楽しみです」


 この世界では10歳までは自分のポケモンを持つことができないという決まりがあります。
 例外もありますが、私たちにはあてはまりませんでしたからやっともう少しでポケモンを貰うことができます。
 そしてポケモンを貰えば子供でも旅をすることができます。


 「ねえ、ミリア。良ければだけど、ポケモンを貰ったらボクと一緒に旅をしない?」

 「一緒に、ですか?」

 「うん。その方が安心だし。何かあったらボクが君を守れるから」


 ダイゴさんは少し恥ずかしそうに頬を染めてそう提案してくださいました。誘ってくださることはありがたいと思います。

 けれど私は首を横に振りました。


 「ダイゴさんは家の都合もありますからホウエンを旅するのでしょう?私はカントーを旅したいので一緒には無理です」


 私は前世で知っているカントーに行きたかったので彼の提案を断りました。ずっと決めていたことです。

 するとダイゴさんは目を見開きます。


 「カントー、なんで?このホウエンでいいじゃないか」

 「いいえずっと前からそう決めていましたから」

 「けど、君がカントーに行ったら。もう簡単に会えなくなる」


 ホウエンとカントーは離れた場所にあり、この世界はまだ通信網などあまり発達していない時代ですからダイゴさんと会うことは難しくなるとは思います。
 けれど


 「大丈夫ですよ。ダイゴさんとは離れていてもずっと私達は友達ですから」


 そう安心させるために言いますとダイゴさんは泣きそうな顔をしました。




 そんなことがあった少し後に私はダイゴさんの許嫁になることになりました。
 急なことに驚きました。いつの間にそんなことになっていたのでしょうか。それまで許嫁のいの字も私は聞いたことがありませんでした。


 決まってからすぐの両家の顔合わせがあり、とある老舗の料亭で正装姿のダイゴさん家族と家族同士で会いました。
 ダイゴさんは「これからよろしくね」ときれいな笑顔で私にそう告げました。
 彼の指には私が彼からいただき付けている物と同じ銀色の指輪がありました。


 「はい。よろしくお願いいたします」


 私も人のいる手前笑顔でそれに応じました。

 婚約のことは初めは驚き思うところもありましたが、特にダイゴさんを嫌いな訳でもありませんでしたので今は構わないと思っています。
 もし私が本当に幼ければ親に将来を決められるなんてなど違った思いを持っていたのかもしれませんが。

 前世の記憶のある私は精神年齢も高かったため、まだ現実を受け入れることができました。
 それに本当に嫌ならば逃げる手段もあることを知っていますし。

 けれどダイゴさんはどうなのでしょうか。
 賢く見目も良く紳士的な今の時点でほとんどの要素をあわせ持つ彼からすると私では不服ではないでじょうか。
 けれど彼は嫌そうというよりこちらを気遣う様子で、彼だって不安でしょうにこちらを心配してくださる様子に申し訳なく思います。


 それから少しして後は若い二人でと、私やダイゴさんの両親は席をはずしました。
 そしてテーブルを挟み二人残されます。

 ……気まずいです。


 「ミリア、急にこんなことになってごめんね」

 「いえ、ダイゴさんが謝ることではありません」

 「ううんそんなことはないよ。……ねえ、ミリア。ミリアはボクとの婚約は嫌?」

 「今は驚いているくらいですが。ダイゴさんこそ嫌ではありませんか?」

 「ボクが嫌なわけないよ。ボクは誰かと結ばれるのならミリアが良いから」


 ダイゴさんはそう照れたように顔を少し染めてはにかみ笑いました。
 まだ歳が一桁ですのにこの女性に困ることのないオーラ。まだ人生も長いのに私では勿体ないと本気で思います。


 「私はダイゴさんが良ければ構いませんが。他に好きな人ができましたら言ってください。いつでも私は身を引きますから」

 「ボクが身を引くことはないよ。それに」


 気遣って言った私の言葉にダイゴさんは首を横に振り、口の端は上げながらも真剣な様子で私を見つめました。


 「ちゃんと君が身を引くと思えなくなるくらいボクはボクのことを好きになって貰えるようにするからね」


 そう躊躇うことなく言いきりました。

 ……末恐ろしい子です。




 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
許嫁になった経緯

夢主にずっと友達発言された後。

ダイゴ「父さんボク欲しい人がいるんです」

とロミジュリの当て馬のように、パパに頼んで婚約しようとするダイゴさん。

ロミオがいないのでなんやかんやうまくいく、かもしれない。

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