cold girl’s ending

 私はセドリックと冷たい早朝の風が吹き込むホグワーツの塔の上に来ました。
 そこは初めてセドリックに泣いているところを見られ、この世界が物語ではないことを知った場所でした。

 今は大広間で宴がされていますからここには誰もいません。

 セドリックは白む空を背景に私へと向き合いますと、口を開きました。


 「ミリア。戦いが始まる前に言っていた、話したいことを聞いてくれる?」

 「ええ、構いません」


 私は緊張しながらも冷静に答えました。

 私も緊張していますが、セドリックも緊張した様子です。張り詰めた表情で私を見つめます。
 そして意を決したように口を開きました。


 「僕は、君が好きなんだ。友人じゃもう足りない。ミリア、僕と付き合ってください」


 予想はしていましたが、やはりそれは愛の告白でした。

 心配そうに私の返答を待つセドリックに、私は頷きました。


 「良いですよ」

 「本当、に?」

 「こんなこと嘘吐く訳がないです」


 嘘だなんて。私だってセドリックのことをいつの間にか好きになっていたのです。
 といいますか、セドリックのような非のほとんどない人に求愛され続けて靡かない人なんて早々いないと思いますし。
 私のことが好きなのは勘違いかと思ってもいましたが、愛想を尽かされてしまったと思ったこともありましたがセドリックはずっと思い続けて下さったのです。
 ずっと愛していると全力で訴えてくださったのです。


 「……」

 「セドリック?」


 私の返事に黙り込んでしまったセドリックに、私は首を傾げます。
 するとセドリックは自身の手を震えさせながらも私の手を取りました。


 「ごめん。もっと、気の利いたことを言いたいけど。嬉しすぎて本当にどうにかなってしまいそうだよ」

 「そ、そうですか」


 ぐずぐずに顔を真っ赤に染めて言うセドリックに私も余計に恥ずかしくなります。

 そんな私の額にセドリックは唇を落としました


 「ミリア。ありがとう。誰より僕は君のことが好きだよ。ミリアと付き合えるなんて今、僕は世界で一番幸せだ」

 「わっ、私もです」


 恥ずかしくて、セドリックから視線をはずしながらも言います。


 「私も幸せです。ですから、私だって一番幸せ……です」

 「……」


 こんなに胸が張り裂けそうな気持ちなのですから私だって負ける訳がありません。
 少しでもセドリックと釣り合うように愛を伝えてみます。
 すると背の高いセドリックから真剣な声が降ってきました。


 「ミリア。君にキスをしても良い?」

 「は、い?」

 「駄目、かな?」


 セドリックの懇願するようなお願いに私は思わずセドリックを見上げました。
 それは先ほどとは違い唇へということでしょう。
 真面目な、愛おしいものを見るようなセドリックの視線とぶつかります。

 それだけで私の頭は真っ白になります。恋をすると馬鹿になると言いますが、見せたくないとは思っていても冷静でなんていられないです。
 もう茹で上がりそうです。


 「よ、よろしくお願いします」


 私は声を絞り出して言いますと、セドリックは微笑み。

 整った綺麗な彼の顔が私へと近寄りました。






 八つの時、もし私がセドリックの手を拒んでいたのならどのような未来になっていたのでしょうか。

 あの時確かに未来は変わったのでしょう。

 セドリックと出会えて良かったと私は思います。


 これからどのような未来が訪れるのか私にはもう分かりませんが。

 知らないことは悪いことではありません。
 知らないからこそ、私はもう誰に遠慮することもなく大切な存在を守れるのですから。

 これからも守り続けたいと思います。

 貴方のいる大切な、失いたくないこの世界を。


happy end

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