truce2
私とセドリックは一仕事を終えてヴォルデモートの約束の時間の30分前に玄関ホールの真上の二階部分へ行きました。
そこの窓からは校庭が広く見渡せます。
巨人の大きな靴や、布などの残骸、焼け焦げた地面が戦闘の激しさを物語っています。
二人で外を見ていたはずですがいつの間にかリルや他のダンブルドア軍団の子や騎士団の人たちも現れ、みなでただ静かに外を見ていました。
再び始まる戦いに緊張しているのでしょう。
次も死なないとは限りませんから。
「ミリア先輩」
私は声をかけられ振り返りました。
声をかけてきたのはドラコでした。
それにそばにいた子たちがドラコに杖を向けます。
一瞬びくりと震えたドラコですが自らは杖を出さずに、私だけを見つめました。
「ドラコ。無事だったのですね。貴方のお友達は大丈夫ですか」
「……はい。二人はスリザリンの寮にいます」
ドラコは友達という部分に少し反応しましたが淡々と答えます。
どうやら原作で死んだクラッブは生きているようです。
「危なかったところをポッター達と、スチュワート先輩が助けてくれました」
「スチュワートが」
「はい、スチュワート先輩でした。先輩は炎に巻き込まれたクラッブを助けて、頭を下げてポッター達に僕らを助けてくれたお礼を言いました」
「そうでしたか」
……本当にスチュワートは助けてくださったのですね。
私はチラリとリルを見ます。
リルが伝言を下さった“CとFは俺がやる”はやはりスチュワートからの伝言だったようです。リルが何故“兄”と言ったのかは分かりませんが。
Cはクラッブ、Fはフレッド・ウィーズリー。この二人は作戦を立てる際にこの戦いで死ぬことをスチュワートに伝えていました。
彼のことですから私が無理をして彼らを助けないように自分がやると言って下さったのでしょう。確かにスチュワートに言われなければ行っていた可能性はあります。
先ほどフレッドも生きているのを確認しましたし。彼は一人も欠けることのなかった家族全員で抱き合っていました。
「先輩はスチュワート先輩はどこにいるのか知っていますか」
「そうですね。おそらくですが今は校内にはいません」
計画ではスネイプ先生をテールと一緒に私の家へ運び手当てをする手筈ですが。
それを聞くとドラコは少し落胆した様子で頷きました。
「……そうですか」
「ええ。けれど、ドラコ、あなたが無事で良かったです。おそらくは次の戦いで最後になるでしょう。それまでは貴方も寮にいなさい。そして、戦いが終わった後は貴方は好きなように道を選べば良いです」
次の戦いの後、もしかしたら私は生きていないかもしれませんが。だからこそドラコに言っておきました。
私はどんな道であれ、彼が家族のために努力して生きてきたことを知っています。
ですからヴォルデモートがいなくなった後はある程度は自由に生きられたら良いと思います。
「待ってください。先輩」
「はい」
「先輩はこのまま戦うつもりですか」
「当たり前です」
当然のように私は頷きますとドラコは元から白い顔をより白くしました。
大広間でも言ったはずですが今更どうしたのでしょうか。
ドラコはキツく口を結んだ後に、口を開きました。
「…………僕も一緒に戦わせてください」
「え?」
私は彼の言葉に驚いて声をもらしました。
それにドラコは眉を寄せ鋭く私を睨みながらも、顔を赤く染めて言います。
「勘違いしないでください。別に先輩のことが心配だとか死なないで欲しいから戦いたいとかではなく、スチュワート先輩がミリア先輩がいなくなったら悲しむと思ったので、先輩から助けてもらった借りを返したいだけですから!別にミリア先輩のためではありません」
「もちろんそれは分かりますが」
さすがに私はそこまで自意識過剰に考えることはしません。私をなんだと思っているのでしょう。
ドラコは私の返答に真っ赤にしたまま口を数回閉口させ、そのまま口を噤みました。
「くっ、あはははっヒーー腹が痛い!」
私達の沈黙を破り笑い声が起こりました。リルです。彼はお腹を抱えて苦しそうに笑います。
「わっ、笑うなお前」
「だってマルフォイ、ヒーーハハハっ!だめ、くるしい。うん、良いんじゃない、でもマルフォイはさすがに信用できない人こっち側には多いから、戦うのなら俺が白ローブの人に頼んで『くたばれヴォルデモート』ローブを貸して貰おうか。なんなら“破れぬ誓い”もする?あはははっ、さあ行こう!」
「おいっ、手を引っ張るな!」
「あっはっはっは」
リルはドラコの手を引き笑いながら嵐のように二人は去って行きました。
元気なのは良いことですが故人を偲んでいる人もいるのでもう少し静かにした方がいいと思いました。
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