truce

 校庭で戦っていますと突然耳にヴォルデモートの声が響きました。一時間の猶予と犠牲者を増やしたくなければハリーに来るようにとのことです。
 原作の通りにやっと一時間の休戦が告げられました。

 それによりお互いの軍勢が一度戦闘から引き上げます。
 私たち校庭で戦っていた人達も静かにホグワーツの中へと戻りました。

 城の中は静かでした。
 一度息を整えて、大広間へ戻りながら怪我をした人や動かない人を大広間へ運ぶのを私もセドリックも手伝いました。


 大広間へ着いてから壁を背に一人少しだけ休んでいますと、ちょうど追いかけてきた父が薬瓶を手に私へ駆け寄りました。
 怪我はないかミリア。この……結婚前の私の娘に傷など作ったのは誰だ。と一人大騒ぎしている父に気が付いたマクゴナガル先生が父を呼びました。


 「ルーカス!?なぜ貴方がここに」

 「娘に会いに来たに決まっている!それ以外にあるか」

 「貴方は……いえちょうど良いです。貴方は癒者なのですから怪我人の手当てをお願いします」

 「んなもの唾でもつけとけば治る。娘の方が大切だ。むしろ娘以外は知らん」


 唾をつけて治るのでしたら医者はいりません。
 まるで駄々っ子のように言う父に内心息を吐きました。もう私は大人で子供ではありません。
 そもそも私の怪我など大したものではありません。


 「お父様、怪我をしている人たちを看てあげてください」

 「だが」

 「私は大丈夫です。ですからお願いします」


 私はそう父へ頼みますと、父は顔を明るくして「娘の頼みなら仕方ないな!」と杖を振るって怪我人の元へと行きました。


 「あまりミリアと性格は似ていないね」


 父が離れたタイミングで他の騎士団の元へ行っていたセドリックはこちらに来て苦笑しながら言いました。
 セドリックも生傷は増えていますが、大きな怪我はありません。


 「そうですね。あまり似ていないかもしれません」


 実父とはいえ私には前世の記憶がありますから、似ていないのも仕方がないのかもしれません。
 けれど、それが悲しいとは思っていません。
 離れていてもきちんと愛してくださっている両親に私は感謝しています。


 「そう?似ていると思うけど」


 そう考えていますといきなり声をかけられ、振り向きますとそこにはあちこち怪我をしたリルがいました。
 彼も無事だったようです。


 「だってあの白ローブ集団の『くたばれヴォルデモート!』って君の父さんの発案だったらしいよ。味方だって分からせるために。それで貴重な白ローブ……一応白蛇のローブって呼ばれてるけどそれに文字を書くことにだいぶ揉めったてさ。だから君も服にヴォルデモートの悪口を書こうとしていたし似ていると思うよ。似た者親子」


 リルの言葉にセドリックは首を傾げました。


 「君は彼らのことを知っているのかい」

 「うん。俺の父方の親戚だし。父さんは婿だから一応俺はレイブンクローの家系だけど。父さんはスリザリンの名家出だよ。つまりあの白集団は俺の親戚と+αなスリザリン出身の人たち」


 リルは大広間に入り先生方と話している白ローブの人たちを目で差して説明してくださりました。
 戦っていた間は人数を数える余裕はありませんでしたが、父を入れて17名います。
 リルの話にセドリックは驚いたように声を漏らします。


 「スリザリン寮の人も味方をしてくれたんだね」

 「ええ、そうですね」

 「ははっ、一番に協力を申し出たミリアさんだってスリザリンなのに何驚いてるの?まあいいや。ミリアさんの無事も分かったし俺はネビルのとこに戻るよ。どうせまだ駆け回っているだろうし。またね、ミリアさん」

 「はい、ありがとうございました」


 私はお礼を言いますと、リルは笑い返し去って行きました。

 そして私たちは二人残されます。


 「私たちも他の人たちを手伝いに行きますか」

 「うん、そうだね」


 セドリックはうなずきましたので私は足を踏み出します。
 けれどセドリックは二歩目を踏み出す前に私の腕を掴み、背後から私を抱きしめました。


 「セドリック?」

 「ミリアが無事で良かった。少しだけ、こうさせてもらってもいい?少しだけだから」


 絞り出すように耳元でそう言われ私はすぐに言葉を返すことができませんでした。
 ですので私はセドリックの手に自分の手を重ねました。


 「構いません。セドリックも無事で良かったです」


 大広間はたくさんの怪我人や死人が運び込まれています。
 見ていて苦しくなりますが、同時に自分たちが生きていると知ると胸が苦しくなりました。

 原作とどれくらいの差があるのでしょう。
 原作で何人が死んだかなんて覚えてはいませんが、少しでも助けられていて欲しいです。

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