negotiation3

 「というわけでミリアさんをダンブルドア軍団に加えたいんだけど良いかな」

 ネビルは早速私を隠れ家である秘密の部屋へ案内し、メンバーを集めますとダンブルドア軍団に私を紹介して下さりました。
 予想はしていましたがみな一様に苦い顔をしています。


 「彼女ってスリザリンでしょ」

 「危険じゃないのか」


 そんなことを口々に言われます。当然のことです。

 そこにリルが口を開きました。


 「だからさっき言ったように彼女には“破れぬ誓い”をしてもらったし。裏切らないという点は信用できる。仮にもしあの人の命令での特攻だとしてもそれなら“ヴォルデモートに組しない”という約束を破っているから今彼女は死んでいるよ」

 「それは……そうかもしれないけど。例のあの人なら俺たちの知らない魔法も知っているかもしれないだろ」

 「スリザリンよ。あの人に関わりがある可能性は高いわ」


 そうダンブルドア軍団の子たちは口々に言っています。
 今ホグワーツ内では特にスリザリンに対する悪感情が高まっているでしょうから、無理もありませんが。
 私はいつまでも平行線な議論に一歩進み出ました。
 それに横にいるネビルとリル以外は緊張した面もちで私を見ました。


 「先ほどから私を信じられないと言いますけど。ヴォルデモートのような人の名前も言えない人たちに言われたくもありません。それに私は“破れぬ誓い”までしました。この中でそこまでのことをした方はいますか?むしろここにいる誰よりも私は信用できるはずです」


 私がヴォルデモートの名前を言いますとみな戦慄した表情を浮かべたり、涙を滲ませたり、息を飲んだりとしましたが。
 そんなことで大丈夫なのでしょうか。


 「でしたらもっと言います。ヴォルデモートの馬鹿、アホ、間抜け。他にも必要でしたらなんとでも。プライドの高いヴォルデモートがこんなこと必要なことであっても許す訳がないでしょう」


 会ったことがなくても人となりは書物などにもなっていますから知っているはずです。
 私がヴォルデモートの悪口を言うと隣で笑い声が聞こえました。リルです。


 「そうだね。これから戦う相手だから俺たちはそれくらい言えないと、ヴォルデモートのタコとか。闇の帝王とかネーミングセンスどうなってるの?とかさ」

 リルは笑いながらそう言います。
 リルの冗談になんとか笑おうとする人がいますが、やはり頬がひきつっています。
 それを無視してリルは言葉を続けました。


 「ミリアはスリザリンだけど、対極にいるグリフィンドールにだって裏切り者はいるし、ハッフルパフ、レイブンクローもしかりだろ。寮なんか関係ない。俺は彼女のことを信用するよ」


 私はリルを見ますと、彼は笑って応えてくださいました。


 「私も信用しても良いと思うわ」


 そう声を上げてくださったのは赤毛の女の子ジニー・ウィーズリーでした。


 「ミリアさんは確かに同級生以上、特に私の兄に対しては厳しかったけどまああの二人だから気持ちは分からなくもないわ。その兄たちもミリアさんを気に入っていたし。それに年下の子たちには寮関係なく優しかったもの」


 ジニーはそう言うとニコリと私に笑いかけました。


 「俺も仲間に入れても良いと思う。あと、あのアンブリッジ親衛隊に追われていたとき助けてくれてありがとう!やっと言えて嬉しいです」


 元気よくお礼を言ってきた彼は図書館からの帰り道に夜に会ったハッフルパフ生でした。
 別にあれは助けるつもりで助けたわけではありませんでしたが、何も言わないでおきます。


 彼らの言葉を筆頭に私を受け入れてくださる声が次々に上がりました。
 これは望んでいたものですが………。


 「ならミリアさんをダンブルドア軍団に迎えても良いかな」


 ネビルが尋ねると、部屋中から賛成の声が上がりました。


 「あ、ありがとうございます」


 今更ですが私はそんな様子に恥ずかしくなり少し上気する顔でお礼を言いました。


 「ならミリアさんも入るならタペストリー、スリザリンも増やした方が良いかな」

 「そうだね」


 リルの言葉にネビルが頷くと共に、銀と緑のスリザリンの紋章の入ったタペストリーが部屋に現れ、部屋には元々あった三つとともに各寮四つのタペストリーが並びました。

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