negotiation

 唯一の学校への通り道のあるホッグズ・ヘッドに行った後は分かっていましたが大変でした。
 やはり私は前にスチュワートに言われた通りにスリザリン生ですから、店の主であるダンブルドアの弟アバーフォース・ダンブルドアから警戒されました。
 無抵抗であることを示すために杖を手放し、ネビル・ロングボトムに話がありますと伝えましたが首を縦には振ってくださいませんでした。

 ただ杖を持たずに丸腰で詰め寄ったのが良かったのか彼はこちらに杖を向けるものの攻撃まではしてきません。
 なので私は長丁場を覚悟で彼に訴えました。

 ですが、そこに計ったようなタイミングでネビルは扉の奥から現れました。
 その彼のえぐられたような風貌に思わず顔をしかめてしまいました。体罰を受けていることは本で知ってはいましたが、痛々しいものです。


 「ミリアさん?なんでここに?」


 ネビルは私がここにいることに驚いた顔をして、私の名前を呼びました。
 
 私の名前を知っていたようです。


 「ちょうど良いところに来ました。ネビル、私を打倒ヴォルデモートのレジスタンスに入れなさい」

 「え?」

 「私はスリザリンですが貴方たちを裏切りません。何でしたら“破れぬ誓い”もします。ですので、私を仲間にしなさい」


 私は今度はネビルに詰め寄るようにそう言いました。

 どうしたら私を信用させることができるのかを考えましたが、やはり命を張るしかないでしょう。
 ですから破ることなんて有り得ませんが、破ったら死を意味する破れぬ誓いを私はすると口早に主張しました。詰め寄る私にネビルは怯みました。


 「面白そうだから良いじゃん」


 突然かかった第三の声に私は扉の方向に視線を移しました。
 そこには綺麗な顔立ちの童顔な男の子が笑みを浮かべながら立っていました。

 私は彼を知っています。現在はレイブンクローの七年生の青年です。
 彼の兄はレイブンクロー生で私と同い年でしたし、彼は名家の出でまた兄弟揃って綺麗な顔立ちなので有名です。
 レイブンクロー生のためかネビルとは違い、彼はあまり傷を負っていませんでした。


 「ミリアさんの家は確かにスリザリンだけど。“例のあの人”に属している訳でもないし、むしろ仲間になることに反発しているって聞くし。問題ないだろ」

 「リル、僕だってミリアさんをまったく信用していない訳じゃないよ。彼女はDAのメンバーを助けてくれたこともあるから。けど、それでも今彼女を入れることはダンブルドア軍団内に不和を生むかもしれない」


 ネビルはそう慎重に言います。
 私は思いの外信用してくださっている二人に驚きました。もっと警戒されるかと思っていましたが。
 悪感情を向けられていません。

 彼、リルは鼻で笑いました。


 「アホか。それくらいのことで崩れる絆なんてそもそも信用できないだろ。まあとりあえず“破れぬ誓い”を結んでから他のダンブルドア軍団に相談しても遅くないんじゃね。俺が“結び手”になるよ。スリザリンでしかも魔法省職員に力を貸してくれる人がいるのは役に立ちそうだからね」


 そう言うとリルは私の方を見てからニコリと笑いました。


 「でもその前にミリアさんにいろいろと質問していい?」

 「もちろん構いません」


 私はしっかりと頷きながらも、この青年は面倒くさそうだと思いました。

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