meeting1

 最終巻『死の秘宝』の年の秋に私はスチュワートを家に呼びました。
 こんな闇の勢力が活発な時に家まで呼ぶことに不安はありましたが、スチュワートはすぐに快諾をして家まで来てくださいました。


 彼と会うのは卒業式ぶりです。
 一年と少しが経ちましたが久しぶりに会ったスチュワートに変わりはなく、相変わらずの分厚いメガネに無精ひげでした。


 「お久しぶりです。スチュワート」

 「ああ。久しぶり。元気そうで嬉しいよ」

 「私もスチュワートが無事なことを嬉しく思います」


 そんな挨拶をして私は彼を家の客間に案内しました。

 私たちはアンティークなテーブルの椅子に向かい合い座り、そこにテールが現れ私たちの前に紅茶を運んできました。
 テールはカップを置くと私の後ろに下がりその場に留まります。


 「それで、俺を呼んだのは何か理由があるのか?」


 スチュワートは一度カップに口をつけてから話はじめました。
 聡い彼ですから私は理由を言わず彼を呼びましたが、そう聞きながらもある程度の用事を察しているのでしょう。


 「はい。貴方に協力をして欲しいことがあります」

 「……君から頼まれることなら余程のことでない限り引き受けるつもりだが。何だ」

 「私はスネイプ先生を助けたいのです。そのことで貴方を呼びました」

 「どういうことだ?」


 スチュワートはスネイプ先生の名前を出すと緊張した面もちで表情を硬くしました。


 「私は限定された未来を知っています。その最後にスネイプ先生は死んでしまいます。私はそれを助けたい。ですのでスチュワートに協力を仰ぎたいのです」


 私は内心緊張しながらも淡々と話します。初めて誰かに先を知ることを話しました。

 少しの沈黙の後、スチュワートは口を開きました。


 「前に君から頼まれたときに一つの予想としてはあったが。君は先見ができたのか」

 「占い学でいう先見とは違いますが。私の知る未来は後半年ほどのものだけですし。その先のことは知りません」

 「そうか」


 スチュワートは疑う様子もなく頷きます。
 私は人にに話すことに不安もありましたが。
 不死鳥のフォークスが私の元に来て、もしかしたらスネイプ先生を救えるのではないかと考え決めました。助けられるのでしたら不安など小さなものです。


 「分かった。スネイプ先生は俺の恩師だから、先生が死ぬのなら俺も死んで欲しくはない」

 「ありがとうございます」

 「いや、それで俺は今回は何をすればいい?」


 スチュワートはあっさりと頷きますとそう尋ねました。


 「まずはこれから何が起こるか貴方に話します。そこで貴方の意見を聞かせてもらいたいのです」

 「分かった、話してくれ」

 「はい」


 私はスチュワートへ私の知ることを話しました。

 グリンゴッツ銀行がハリー・ポッターにより侵入されること、その後にホッグズ・ヘッドを通り彼がホグワーツへ戻ること、そこでヴォルデモート率いる闇の魔法使いと戦うことになること。
 またこちらには不死鳥のフォークスがいることまでを細かに話しました。

 それだけで説明を一時間をかけ、より詳細なことは魔法のかかった紙に書いてあったのを渡しました。この紙は私の意志で消滅することができます。

 スチュワートは紙に目を通しながら話します。


 「ここまで知っているのなら、スネイプ先生は助けられるな」

 「そうでしょうか。しかし、ヴォルデモートの目をかいくぐる必要があります。彼には籠に入っているとはいえ蛇もいますし」

 「それなら問題はない。俺は話してはいなかったが登録していないアニメーガスだ。やりようはいくらでもある」


 そうスチュワートは簡単なことのように言いますが、アニメーガスですか。知りませんでした。
 アニメーガスに彼がなれるとは。そういえば彼はよく禁じられた森に忍び込んでいましたが。一度も見つかっていなかった不思議に思っていましたが、それが理由なのでしょうか。

 級友の初めて知る事実を知り、今は心強かったです。
 それなら確かにスネイプ先生を救える可能性は高まります。
 私はそう思い心が高揚しましたが。


 「今回の作戦は俺だけでする。君は動かなくていい」


 スチュワートの続いた言葉で一気に盛り下がりました。

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