ナンパ事件
本当に迷惑です。
「お姉さん可愛いね」
「良かったら俺らと遊ばない?」
ポアロへ行く途中、ガラの悪い男二人組に捕まりました。
まあ人通りのある道なので下手なことはしてこないため無視をして進みますが、それでも付いてくるので面倒です。
「お姉さん、どこの国の人?もしかして日本語分からないとか?」
「ならアイラヴユーてか?ぎゃはは」
「………」
あんまりな発音に思わず正確な発音を教えて差し上げたくなりましたが、我慢して無視をします。
しかし、このままポアロに行ってはバイト先を知られてしまいますし迷惑をかけますから、どこかでまく必要があります。
横道に逸れて姿現しをしますか……。
そう考え息を吐きますと前方から名前を呼ばれました。
「あれ、ミリアさん」
そちらを見ますとそこには安室さんがいました。
彼は私へにこやかに笑いながら、足を止めた私の前へと来て止まりました。
「会えて嬉しいです。ところでこちらの方々は?」
安室さんは笑顔のまま、私の隣にいる男達を見ました。
「知らない人です」
「ああ、そうだったんですね。てっきり僕の恋人に何か用があるのかと思いました」
安室さんはそうしれっと嘘を言いました。
けれど意図が分かりましたので私はそれを否定しませんでした。
すると男たちは「クソっ、男がいんのかよ」と舌打ちをして元来た道を戻っていきました。
しつこい人たちではなく良かったです。
「安室さん、ありがとうございました」
「構いませんよ。たまたま道を通りかけたら貴方が困っているようでしたからね。お役に立てて良かったです」
安室さんは何でもないといった様子でそう言います。
「ミリアさんはこれからポアロですか?」
「はい。ちょうど向かっていたところでした」
「でしたら送って行きましょうか?またあの手の人に絡まれたら困りますし」
「そうあることではありませんから大丈夫ですよ」
それにナンパは元の国の方が多かったですし。
私はいざとなれば魔法で逃げられますからこれくらいなんともありません。
すると安室さんは困ったような顔をしました。
「すいません。本当のことを言いますと僕が不安なのでミリアさんを送って行きたいんです。駄目ですか?」
「………」
私はこれが演技だと知っているので大丈夫ですが、これは普通でしたら確実に勘違いをさせてしまいます。
私はホストなど行ったことはありませんが、ホスト顔負けですね。
さすが組織の一員です。
ですがこれは困りました。
本音で言えばお手数をかけるのは申し訳ないので断りたいですが、こういうことに慣れていないので断り方が分かりません。
「ああ、そろそろシフトの時間ですね。ミリアさん、急ぎましょう」
返事のない私にじれたのか、答えを聞かずに行くことにしたらしく先導する安室さんの背中を私は追いました。
「あ、あの。安室さん」
「はい?」
「ありがとうございます」
私が彼にお礼を言いますと、安室さんは振り返り
「いいえ。僕は貴方の役に立てるのが嬉しいんです」
と少し赤く染まった笑顔で言いました。
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[mokuji]