sorrow and hope
私は兼ねてからの希望通り魔法省に就職しました。
私の仕事は事務的なものですがヴォルデモートが復活した今、忙しく過ごしています。
スチュワートは魔法薬学系の仕事に就きました。
彼も忙しく働いているようですが時々手紙のやりとりをしています。
とはいえ話す事柄もありませんでしたからむしろ手に入れた品の贈り合いや、闇の魔法使いたちについての情報のやりとりですが。
セドリックは噂によると闇祓い局に就職したそうです。今は不死鳥の騎士団に所属して活動していると聞きました。
本来なら数年の研修期間があるそうですが、今の状況ではすぐに現場にでなくてはならないのかもしれません。
まあ優しい彼なら進んで前線に出てしまいそうですが。神秘部の例もありますし。
彼が闇祓いになることはまったく予想のしていなかったことではありません。
ですがどうして彼は危ない道を選ぶのでしょう。
セドリックとは卒業以来連絡を取ることはありませんでしたので私は彼の生死すら分かりません。
生きていてほしいです。死なないでほしいです。
私は祈ることしかできません。
卒業して一年後の6月、新聞に大きな見出しが踊りました。
『アルバス・ダンブルドア死去』
彼は死んでしまったそうです。
原作の通りにおそらく流れは進んでいるのでしょう。
関わりが多かったわけではありませんが、それでも記事を読み悲しくなりました。
助かる道は無かったのかと思いますが、校長は死ぬことを望んでいたのです。
それなのに私が動くわけには行きません。自分の命をかけてでも何かを守りたい気持ちは分からなくありませんし。
それに校長を殺すために動かされていたドラコのことが心配です。
彼は後輩ですから。
…スネイプ先生のことも。
いずれスネイプ先生も死んでしまいます。
本当は助けたいです。彼は大切な先生ですから。
けれど、頭の中でどのように行動すればいいのか想定する度にハリー・ポッターを救えなくなってしまいます。
ニワトコの杖の所有者を誤魔化すためにスネイプ先生はヴォルデモートに殺されなければならないのですから。
スネイプ先生の望みはハリー・ポッターを生かすことです。
それを奪うことは、してしまいたいですができません。
ダンブルドア校長のように彼はハリー・ポッターを救うために命をかけるのですから。
ダンブルドア校長が死去して1ヶ月後の朝。
私の家の窓ガラスを叩くものがいました。
私はそれがフクロウだと思いましたので寝間着のままカーテンを開きました。
すると、そこには赤と金色の羽を持つ美しい鳥がいました。
ダンブルドア校長の部屋で見た不死鳥です。
私は慌てて窓を開け不死鳥を招き入れました。
不死鳥は家に入ると部屋を美しく旋回して、差し出した私の腕にとまりました。
「貴方はフォークスですか?」
尋ねると不死鳥は肯定するように美しい声で鳴きました。
「もしかして、貴方はここにいて下さるのですか?」
私は思わずそう尋ねますと、また不死鳥、フォークスは肯定するように鳴きました。
フォークスの姿が歪みました。
それは私が今、泣いているからです。
「来てくださり、あ゛りがとうございます…!」
嬉しくて、私はしばらくの間泣いていました。涙がボロボロと流れました。
そんな私をフォークスは気遣うように静かに見つめていました。
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