Ministry of Magic4

 物語の流れは原作の通りに(セドリックのこと以外)流れているらしく私たちの立つ廊下にムーディ、ルーピン率いる闇祓いが現れました。

 彼らの足下には黒い大きな犬がいます。

 彼らは私たちに目線をやりましたが、私たちは会釈をして雑談をするフリをしました。
 見破られるのでは、何か魔法をかけられるのではないかと思いましたが、そんなことをしている時間が惜しいといった様子で彼らは足早に神秘部へと向かって行きました。

 あらかじめ騎士団のメンバーとシリウス・ブラックのことをスチュワートに伝えていましたので、スチュワートは彼らが闇祓いであると知っていますし、黒犬がシリウスだと感づいたことでしょう。
 スチュワートは彼らが通り過ぎ姿が見えなくなるとじっとその方向を見ました。

 ですので私も同じ方角を見つめます。


 …あれから時間が経ちましたがセドリックは大丈夫でしょうか。

 まずはじめに思ったことがそれでした。

 私は、危険を承知で向かうべきなのでしょうか。
 死ぬかもしれないことは怖いことです。

 けれど何より怖いのは自分が関わることにより人が死んでしまうことです。
 私が行って良い状況になるかもしれません。逆に事態を悪化させてしまうかもしれません。

 いつも迷います。初めから参戦すべきでしたか。そもそもこのことが起きることをダンブルドア校長につたえるべきでしたか。

 私は流れに任せるとたくさん迷って決めました。
 ですが、セドリックがいると知り。
 私は。



 二人でエレベーターの方角を見つめていますと、それまで静寂に包まれていた廊下にいきなり私たちの背後からカツカツと足音が聞こえましたので、私たちはとっさに振り向きました。
 私とスチュワートはお互い手に杖を持って相手を見ます。

 現れたのはダンブルドア校長でした。

 ホグワーツを出ていってしまった彼を見るのは久しぶりです。

 ダンブルドア校長は杖を構える私たちをじっと見て、そして頷きますと私達へ「良かったら少々、君たちも手伝ってくれないかね」と優しくしかし真剣な様子で言いました。


 そんなダンブルドア校長に私は杖を下げながらもすばやく考えました。

 この質問、ダンブルドア校長は私達の正体に気がついたのでしょうか。そんな相手の正体を見破る魔法はあったでしょうか。

 相手はダンブルドア校長です気がついている可能性はあります。もちろん私たちの姿を借りている人がダンブルドア校長とそれなりに親しい人で気がついていない可能性もあります。
 けれど確かめるには彼に尋ねる他なくそれでは自分が何者かを明かしてしまいやぶ蛇でしょう。
 ですからそれは置いておきます。

 彼の言う手伝うということは死喰い人と戦うことでしょう。
 私はチラリと隣にいる、ダンブルドア校長を表情無く見つめるスチュワートを見て、ダンブルドア校長へ視線を戻しました。


 「ええ。私“は”構いません」


 “は”を強調して言いました。
 スチュワートをこれ以上巻き込むつもりはありませんから。
 暗にスチュワートは断ってくださいという思いで言いました。


 「俺も行く」


 ですがスチュワートは私の願いと真逆の返事をしました。

 私はスチュワートを思わず見ますと、スチュワートは顔を前へ向けたまま私を目線だけ移して何故か責めるように見つめました。


 「それは頼もしい。では行きますぞ」


 喜ばしいといった様子でダンブルドア先生は私達の返事を聞きますと、すぐに先陣を切りエレベーターの入り口へと向かいました。

 私はスチュワートに言いたいことがありましたが下手に話をしてボロを出したくないので、黙ってダンブルドア校長の後に続きました。

 ダンブルドア校長がいるのですからセドリックと同じく運命に守られていないスチュワートがいても危険は低いでしょうし。

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