Ministry of Magic3

 私たちはお互いポリジュース薬を飲みました。
 ポリジュース薬は抹茶色で…まあ不味かったです。
 それにしてもポリジュース薬は良い人か悪い人かで調合した後の色が変わりますが不思議ですね。
 そもそも善人と悪人との区別とは何なのでしょうか。

 こほん、今はそのことは関係ありませんね。初めて使う薬ですのでつい気になってしまいましたが。

 さてテールにはあまり目立たないような人をと頼んでおきましたが私たちが変わった姿は二人とも平凡な容姿の職員でした。
 私はショートカットのくすんだブロンドの真面目そうな女性、スチュワートは頬の痩けた色黒の七三分けの男性でした。

 テールから盗んだ身分証も見せてもらい簡単な情報を覚えて、私たちは魔法省へと侵入しました。


 原作で今回ハリー・ポッターは魔法省に簡単に忍び込めていましたが。
 いくら何でも国で一番の機関がそこまで杜撰な警備だと思わないので、おそらくは忍び込みやすくルシウス・マルフォイあたりが手を加えていたのでしょうね。

 そのおこぼれに預かる形でしたのか、私たちも魔法省へ易々と忍び込むことができました。


 私たちは計画の通りに神秘部へ通ずるエレベーター付近の廊下で2人で待っていました。
 雑談をする演技が必要かと思いましたが不自然なほど人がほとんど通らないのでその心配もありませんでした。
 もしかしたら簡単な人除けの魔法がかかっているのかもしれません。
 それならばおそらくは私たちが来ることができたので目的のない人を寄せ付けない系統の魔法でしょうね。



 私たちが魔法省へ来る前に話し合って時間がかかっていたためか、ハリー・ポッターたちはそれほど待たずに現れました。
 ポリジュース薬の効き目は一時間ほどなのでそれは良かったです。
 現れたのはハリー・ポッターを筆頭にロン・ウィーズリー、ハーマイオニー・グレンジャー、ジニー・ウィーズリー、ネビル・ロングボトム、ルーナ・ラブグッド、そしてセドリック・ディゴリーの七人でした。


 ……何故セドリックが。


 私は思わず目を見開いてしまいました。すぐに表情をなんでもないように戻しましたが。

 どうしてセドリックがいるのしょうか。

 彼は私たちの横を通りポッターたちと共に真剣な面持ちで神秘部の方へ向かっていきます。もちろん私たちに気がつく様子もありません。

 どうして。
 彼が来ることは原作にはなかったはずです。いえ、彼は原作では死んでいたので原作で来るはずなどありませんが。

 私の頭の中は混乱しました。
 確かに彼はイレギュラーですが、ここに来るほどハリー・ポッターとの交流があったようには思えません。
 ダンブルドア軍団に属してはいましたが。

 それならまだポッターよりもチョウとの方が仲が良かったように思えましたし、チョウと仲の良いセドリックと彼女を好きだったハリー・ポッターがここまで来るほどの仲になるでしょうか。

 ふと目の前を見ますと、平凡な男性姿のスチュワートが少し気遣うように私を見ていました。

 そうです。
 落ち着かないといけません。

 これから闇祓いが通るのですから。
 特に警戒心の強いムーディに悟られてはなりませんし。


 …それに。 


 私はこの事態を全く予想していなかったわけではありませんでした。

 彼はもう物語に縛られません。何が起こるかなんて分かりません。

 本音で言えば私はただ現在の状態をこの目で見たいという考えだけではなく、この事態を危惧していたこともありました。

 運命は彼を殺すつもりなのでしょうか。

 私はそれでも動けずにセドリックたちが消えたエレベーターを見つめました。

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