Ministry of Magic1

 いよいよ今年一番の重要な日が訪れました。

 私は私たち七年生が学校最後に受ける試験NEWTが終わった後、スチュワートとあらかじめ約束をしていた場所に行きました。
 少しだけスチュワートがいなければ良いと思いましたが、約束通りにスチュワートは校舎のさすがに生徒は試験終わりでしたので誰もいない裏庭で一人私を待っていました。


 今日はハリー・ポッターがアンブリッジとひと騒動した後に神秘部に忍び込む日です。

 私はこの日一人、魔法省に侵入するつもりでした。

 夏休み前に私がスチュワートに頼んだのは神秘部の場所と魔法省への侵入経路を調べてもらうことでした。
 彼の両親は魔法省務めですから調べることは難しくなかったようです。あっさりと夏休みの終わった後調べてきたことを教えてくださいました。

 本来ならスチュワートには調べてもらうだけのつもりでした。
 けれど彼は調べてきた資料を私に渡す前に、教える条件として自分も行くことを認めるよう要求してきました。

 まさか彼がそんなことを言ってくるとは思わなかったので、私はとても驚きました。
 そもそも魔法省へ忍びこむつもりだということは教えていませんでしたし。予想はできたかもしれませんが、それが私自身が行うことだとは限りません。

 それなのに彼ははっきりと続けて『忍び込むのは君だけだろう』と言い切りました。
 スチュワートは観察力があることは知っていましたが、まさかあっさりと見破られるなんて。驚きのあまり誤魔化すことを忘れてしまったのでスチュワートは自分の予測が正しかったと知られてしまいました。

 スチュワートにそう言われましたが、私がしようとしていることは危険があるかもしれないのです。
 ですので『一緒に来ることは危険なことです。もしかしたら退学の可能性だってありますし、最悪命を失うかもしれません』と考え直させようとしましたが、『それを君はしようとしているんだろ。なら俺の意志は変わらない』と言いました。ほとんどの物事に無関心なくせに彼の意思は固いようです。

 それから話し合い、結局私は魔法省へ侵入するときは彼を連れて行くと約束をしました。
 一人で行きたかったですし別の手段で魔法省の内部を調べることもできますが、できるだけリスクは減らしたいですし。
 それにスチュワートはあまり足を引っ張るようなことをするような人ではありません。
 問題はないでしょう。おそらく。調べてもらう時点で私は彼を信用すると決めていましたから今更疑うつもりもありません。

 …問題はないでしょうが、友人を巻き込むのは気が進みません。



 私は予めテールに頼んでホグワーツにこっそりと持ってきてもらっておいた二本の箒のうち片方をスチュワートに差し出しました。
 もしかしたらスチュワートは箒を上手く使えないのではと思いましたが杞憂なようで。
 あっさりと受け取ると「どこまで飛ぶ?」と聞いてきました。


 「姿現しのできるホグワーツ郊外までです。そこから貴方が調べて下さった通りに魔法省の入り口の場所へ向かい、テールと合流します。そこでテールが予め適した魔法使いの体の一部を用意していますので、ポリジュース薬を使い魔法省内部へ侵入します」


 私はポリジュース薬の入った水筒をスチュワートに見せて言いますと、スチュワートは頷きました。
 このポリジュース薬は私の親に頼みました。彼らは理由も聞かずにあっさりと了承して今朝送ってくださいました。
 もし手にはいらなければ別の手段を取らなくてはならなかったので助かります。


 「分かった。なら行こうか」

 「ええ」


 スチュワートは忍び込む理由も少しくらい聞かれるかと思いましたが聞かずに言いましたので少し拍子抜けしました。
 まだ彼にはこれから何をするのか何が起こるのかを教えていません。

 私たちは箒にまたがり薄く草の生える地面を蹴り日の沈む空へと飛び上がりました。







 「……本当に1人で行くつもりだったのか」

 「うるさいです」


 私とスチュワートは並んで空を飛びました。
 スチュワートは想像以上に箒がとてもお上手でした。何も問題なくスイスイと進みます。

 それに比べ私はフラフラと少し蛇行しながら飛びますので、それを見かねて今ではスチュワートは私を支えながら飛んでいます。
 確かに私は箒が苦手です。
 ですのでこの日に備えて私は箒で飛ぶ練習をしていました。その甲斐ありフラフラとはいえここまで飛べるようになりましたし。

 1人だって時間はかかっても郊外へ出ることはできました。


 「そういえば昔のミリアの飛び具合いは酷いものだったな。ここまで飛べるようになっただけでも頑張ったか」

 「うるさいです」


 心の中の自分への言い訳も人に言われると悔しいもので。

 私は恥ずかしさから顔を赤くしてスチュワートから顔を背けますと、「前を見ないと危ないぞ」と横から注意されました。

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