first contact×girl:b

 しばらく暗い路地を歩いていると前方から子供の泣き声が聞こえてきました。
 私たちの進む道すがらでしたのでそのまま歩いていると、そこには私と同い年くらいの男の子が泣いていました。服装からして、それなりに裕福な家庭の子供だと思います。


 それが何故ここにいるのでしょうか。


 とは思っても、私はこの場所をよく知りませんでしたし、どれくらい危険な場所なのかも分からなかったので私は子供の横を通り過ぎました。
 下手に関わるつもりなどありませんでした。


 けれど子供の横を進むと何かに私の服が引っ張られたので、チラリと見ると予想はしていましたが子供が泣きながら私の背中の服を掴んでいました。


 「お嬢様、いかがいたしますか?」

 「別に構わないわ。行きましょう」


 テールが聞いてきたので私はそう返すと、また歩くのを再開しました。
 特に危ない感じはしませんでしたし、男の子が勝手に付いてくるのなら誘拐にもならないと思ったからです。

 私がテールに付いて歩くのを、男の子も私の服に掴まったまま付いてきましたので、なんだかアヒルの親子になった気分でした。




 ノクターン横丁からダイアゴン横丁へ来ると先ほどまでと違い、陽気な雰囲気を漂わせていました。色鮮やかなお菓子や、見たこともない生物を売っているお店。なぜか箒ばかり売っている店など、見ていて面白いものがたくさんありました。
 そんな町の雰囲気を楽しみながら歩いていると、テールが一つのお店の前で立ち止まりました。私が見上げると看板に大きく”漏れなべ”と書いてありました。

 どうやらココから帰れるようです。

 私はそれに安堵しながら後ろを振り返りました。
 ・・・結局男の子はここまで私に付いてきていました。


 「そろそろ離して欲しいのだけど」


 私が声をかけると、少年はビクッと肩を揺らし、私の服を離しました。


 「ご、ごめん」

 「迷子ならここの人に言って。待っていれば親も見つかるわ」


 ここに来る人はほとんどここを通るなら、親が彼を捜していれば来るでしょうし。

 私が店の人に言ってもいいのですが、私の親はどうしたとか色々聞かれるのはとても面倒くさいのです。

 私はそれだけ男の子に話して彼から離れ、暖炉を使い屋敷へと帰りました。



 少しだけしか外出していなかったのに、屋敷に戻ってきて帰ったのが久しぶりな気がします。

 帰るとそれまで気がつかなかった疲れを感じました。
 少し体を鍛えることもしないとなと思いました。
 ランニングマシンが欲しいです。


 「お嬢様、せっかくお外に行かれましたのに、わたくしめがいたらないばかりに申し訳ございません」

 「いいえ、暖炉を上手く使えなかった私の責任よ。それにダイアゴン横丁は面白かったわ。しばらくはいいけどまた行きたいのでその時はテール、お願いね」


 本屋があったので、魔法薬の本と魔術の本が欲しい。
 私がそう言うとテールはまたもや涙を流して了承してくれました。




 私は数ヶ月もするとダイアゴン横丁であった男の子のことをすっかり忘れてしまいました。

 もともと記憶するような事でもありませんから。



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