first contact×boy:d

 入学式から次の日の朝、食事を終え寮に戻る廊下で僕は彼女・・・ミリアを見つけた。
 彼女も同じタイミングで食事を終えたらしい。
 僕は思わず彼女を呼んだ。




 「ミリア!」


 僕が呼んだにも関わらず聞こえているはずなのに彼女の歩みが止まることはなく、僕は追いかけて彼女の腕を掴んだ。

 ゆっくりと彼女は振り返ると、僕を見てすぐに僕のネクタイを確認した。

 どこの寮だか確認したのだろう。


 「何ですか?」


 彼女は僕のほうへ向き直り、僕の言葉を促した。
 どうやら”ハッフルパフ”は彼女の中で会話をすることに値したらしい。
 僕は内心ホッとした。


 「君にお礼を言いたくて。二年前の事覚えてる?ノクターン横丁で迷った時に君に助けて貰ったんだけど」

 「・・・・・・ああ」


 少しの間を置いて、彼女は思い出したように呟いた。忘れてはいたみたいだけど思い出してくれたんだ。
 僕はそれだけの事なのにすごく嬉しかった。


 「あの時はありがとう。本当は別れる前にちゃんと言いたかったんだけど、ずっと気になっていたんだ」

 「そうですか。・・・なら聞いたので、私は行きます」


 本当に聞くだけ聞いて、彼女は去ろうとしたので僕は驚いてまた彼女の腕を引いた。


 「まだ何か?」

 「え、あ。君の名前を教えて欲しいんだけど」

 「先ほど呼んでいたじゃないですか」

 「君の口から聞きたいんだ。僕の名前はセドリック・ディゴリー。君の名前は?」


 手を引いたことは反射的だったので僕は動揺したが、これで会話を終わらせたくはなかった。
 けれど僕が名前を名乗ると、なぜか彼女の眉間に皺が寄った。
 どうしたのだろう。




 「名乗るつもりはありません。失礼します」


 彼女は僕の腕を振り払うと、そのまま廊下を歩いて去って行った。


 しばらくの間、僕はその場から動けずに茫然と立っていた。

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