go to the next stage
玄関ホールで私はセドリックと待ち合わせをしています。セドリックに一緒に列車に乗ろうと誘われたからです。
セドリックは監督生なのでホグワーツ急行へ乗車しましたら最初は先頭車両へ行かなければなりませんが、終わったら戻ってくるそうです。
玄関ホールに着くとセドリックはホールにすでにいました。
彼はすでに複数の女生徒に囲まれ話をしていましたので、私はセドリックの元へ行くか迷いましたが。ふと横を見たセドリックに気付かれました。
セドリックは話していた女生徒に断りをいれると私の方へと駆け寄って来ます。
その後ろで女生徒が睨みつけてきます。
好いている人が他の女性の元へ行くのが嫌だというお気持ちは察しますが。
「やあ、ミリア。来てくれてありがとう」
「いいえ。約束をしていましたし。話をしていた方は良かったのですか」
「うん。彼女たちにはちゃんと君を待っているって伝えていたからね」
伝えていた割に納得をしているようには見えませんが。
セドリックの後方から睨んでくる視線を無視しながら私は内心で息を吐きました。
気を取り直してセドリックと一緒にホグワーツ急行へと向かうための馬車を待ちます。
「セドリック。それは梟ですか?」
「ああ、うん。そうだよ」
私はセドリックのトランクの上にある布が被さった鳥籠を見て尋ねますと、セドリックは頷いてその布を取り払って下さいました。
籠の中には可愛らしい梟がいました。梟は私を見ると嬉しそうに羽を広げて嘴を鳴らします。
私はこの子には見覚えがあります。
私は三年生のころから毎年バレンタインにこの梟から匿名のカードを貰っていました。
私が送られるカードのほとんどは匿名でしたのであまり気にしていませんでしたが、この子は甘えん坊さんのようでいつも食事中私のそばから離れず指を甘噛みして甘えてきたので覚えました。
「可愛らしい梟ですね。いつもバレンタインのカードを送って下さっていたのはセドリックだったのですか」
「うん。僕が君に送っていたんだ」
セドリックは頬を染めて照れくさそうに答えました。
この梟は三年生の時から来てくださいましたので、セドリックはそのころからカードを送って下さっていたのですね。
「そう。セドリック、毎年カードをありがとうございました」
「ううん。カードは僕が勝手に送ったものだから礼なんていらないよ」
セドリックは照れながら首を横に振ります。
そんなに前から好いていて下さったのは有り難くそして申し訳がない心地がします。
「ディゴリー!」
「クラム?」
セドリックと話をしているとセドリックがダームストラングの代表選手であったビクトール・クラムに声をかけられました。
彼は同じ代表選手であったセドリックに別れの挨拶をしに来たらしいです。
私は彼らが親しく話しているのを静かに見守っていますと、しばらくしてクラムは私へ視線を移しました。
「ミリア。ミリアヴぁセドリック、君のガールフレンドだったのかい」
「えっと、違うよ。僕の片思いなんだ。二人は知り合いだったのかい?」
「ええ。ダームストラングはスリザリンとテーブルを一緒にしていましたし。他寮と比べ交流がありました」
とはいえクラムとは本当に少しだけしか話をしていませんでしたけど。
目立つ人でしたし原作の主要キャラクターですから。他のダームストラングの生徒には年齢が近い人ばかりでよく話しかけられましたのでそれなりには話していましたが。
彼が私の名前を覚えていたとは思いませんでした。
「片思い?セドリックヴぁいい人なのに、君ヴぁセドリックのことが好きじゃない?」
「友人としてでしたら好きですけど。恋愛としては違います」
普通の人からしたら確かにセドリックは非の打ち所のない人ですので不思議なのでしょう。
クラムは私と横にいるセドリックを見比べ複雑そうな表情をしました。
そんな時、ダームストラングの生徒が離れた場所からクラムを大声で呼びました。クラムはそれに返事をしてからセドリックへと片手を出しました。
「もう行かないと。ディゴリー、ホグワーツにいた間ヴぉくたちに親切にしてくれてありがとう」
「僕の方こそ、クラムと会えて良かったよ。ありがとう。帰ってからも君に手紙を書いてもいいかい?」
「もちろん」
そう言って、彼らは固く握手を交わしました。
私はそれを横で見守ります。
そして、クラムは手を放してから次に私を見ました。
「ミリアもありがとう。君もヴぉくらに親切にしてくれて」
「いいえ。お客様をもてなすことは当たり前のことですもの。道中お気をつけて下さいね」
私も挨拶をしますと、クラムは笑顔で頷き、そしてダームストラングの船へと走って行きました。
ダームストラングの船の前にいる生徒の幾人かが私に気が付き手を振ってきましたので小さく振り返します。
「君もダームストラングの生徒と仲が良かったんだね」
クラムの後ろ姿を見守ってからセドリックは私に尋ねました。
私がセドリックを見ますと、彼は複雑そうな顔をしていました。
「仲がいいのかは知りませんが。他校から来た人たちですので何か尋ねられましたら答えていました。普通ではないですか」
「普通…。そうだね。普通だ」
「ええ。セドリックこそクラムと仲が良かったのですね」
「うん。同じ代表選手だったし。彼も慣れないホグワーツに戸惑っているようだったからね」
セドリックでしたら容易に想像できます。本当に他校生徒であっても分け隔てのない人です。
「…魔法対抗試合はセドリックにとって良いものでしたか」
「うん。確かに大変だったしいろいろあったけど。僕は代表選手になれて良かったよ」
良い経験となったのでしたら、良かったです。
原作のセドリックはどう思っていたのかは知りませんが、今いる彼は笑顔で迷いなくそう言うのです。
「そうですね。私も他校の生徒と知り合えて良かったです」
やはり他校の人と接するのは世界が広がりますし。ダームストラングの話を聞くのは内心は楽しかったと思います。
するとセドリックは再び複雑そうな表情に戻り「君はダームストラングに手紙を書く友人はできたの?」と聞いてきたので「いいえ」と首を横に振りました。
さすがにそこまで仲良くなるつもりはありません。
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