go to the next stage

 やってきた馬車に私はセドリックと一緒に、レイブンクロー生で二つ学年が下の女の子二人と相乗りました。
 彼女たちはセドリックがいるので頬を染めて背筋を伸ばし少しでもよく見せようとがんばっていました。もし相手がセドリックでなければ少しは微笑ましく思えますが、今はただ居心地が悪いです。

 私は気にしていないという体を装い窓から外を通る他の馬車を見ます。
 馬車を引いている、人の死を経験することで見ることのできるセストラルを見ようとしますが、やはり私には見えません。来年はその生物がキーになりますので、なんとかこれを使うようにハリー・ポッターに伝える方法はないでしょうか。

 原作とは違いセドリックは生きていますので、ハリー・ポッターはこの生き物が見えません。それでは偽情報に騙されてシリウスを助けに行くことができません。

 …むしろ行かないほうが良いのでしょうか。あれは行くだけ無駄ですし。意味があるとしたらシリウスの死でしょうか。

 私はシリウスを救うつもりは今のところはそこまでありませんが。

 運命が変わったとはいえ、私にはやはり全てを助けるという勇気のある人にはなれません。
 私が強ければ、努力はしていますが、それでも全員を守れるなんて言えるほど私は強くなんてありませんから。

 ふと、馬車を見ていますと悪戯仕掛け人の双子が見えました。こちらには気づいていない様子で何か話し合っています。
 おそらくはバグマン関係だと思いますが。

 そういえば、結局ハリー・ポッターは単独勝利になりましたが、ルード・バグマンは子鬼との賭けに勝ったはずです。
 どうなったのでしょう。まあ、勝ったにせよ負けたにせよあまり関係のないことかもしれませんが。
 

 「ミリア、何を見ているの?」
 

 セドリックが横から話しかけてきましたので私は窓から視線を移します。


 「外を見て考え事を。セドリック、貴方は馬車を引く生き物が見えますか?」

 「生き物?ううん、見えないけど。何か生き物がいるのかい」


 セドリックも誰かが目の前で死ぬところを見てそれを乗り越えたことがないようです。
 それにしても誰かが死んだところを見た生徒にだけ見える生き物を馬車馬に選ぶなんてホグワーツは趣味が悪いですね。


 「はい。私にも見えませんが。馬車は人が死んだところを見たことがある人にだけ見えるセストラルという生き物に引かれているらしいです」

 「そうなんだ。知らなかったな」


 セドリックも窓の外を見て馬車を引く生き物を目を凝らして見てみますがやはり見えないようで、席へと体を戻しました。


 「やっぱり見えないな。けど、自分だけが見えるとしたら怖いね。僕はその話を聞いたことがなかったけど。見えているのに言えずにいる人もいるのかな」

 「そうですね。セストラルの噂を聞きませんから下手に話したらおかしな人だと思われてしまいそうです」

 「うん。確かに。僕もミリアがそういう嘘を言わないことを知っているから疑わないけど。他の人なら少し訝しんでしまいそう」



 やはり実際にその姿を目にしないと本当に信じることなんて難しいですよね。
 しかも原作では知っているのは『ザ・クィブラー』の編集長の娘である信憑性の薄いルーナだけでした。


 「あら。セドリック、私のことを信じてくださりありがとうございます」


 私がセドリックに笑いかけてお礼を言いますと、彼は頬を染めて「いいや、当たり前のことだよ」と言って下さいます。

 私は改めて自分はスリザリンだと思いました。


 これは保険です。
 彼なら信憑性がありますから。


 来年度から私の知らない物語へ進みます。
 どのような運命が待っているのかはしりませんが、それが最善の運命でありますよう祈りましょう。


 【第一章完】

[ 62/179 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]