first contact×boy:b

 彼女を見ると彼女も看板を同じように見上げていた。

 店には沢山の魔女や魔法使いが席について、色とりどりの料理や飲み物をテーブルに並べて賑わっていた。



 僕がぼーっと店内の様子を見ていると、彼女は僕に初めて振り向いた。


 「そろそろ離して欲しいのだけど」


 目を不機嫌そうに細めながら彼女が言ったので、慌てて僕は彼女の服を離した。


 「ご、ごめん」

 「迷子ならここの人に言って。待っていれば親も見つかるわ」


 僕が謝ると彼女は淡々とそう言った。もしかしたら彼女はその為に、僕をここに連れてきてくれたのかもしれない。

 僕はまだ泣いたすぐ後のせいで、しわがれた声になってしまったが彼女にお礼を言った。



 彼女はそれに興味なさそうにして何も言わずに僕に背を向けると、店内に入っていった。

 僕は慌ててそれを追うが、追いつく前に彼女は店の暖炉を使ってしもべ妖精と共に消えて行った。



 きちんと挨拶もお礼もしないうちに彼女は帰ってしまった。結局僕は彼女の名前も何も知らない。
 それに気が付いて僕は店員に近づき彼女の名前をきいてみた。けれどその店員は僕が誰のことを言っているのか分からなかった。

 僕は仕方が無いので、店の人に親とはぐれたことを話し、店の中で待たせてもらった。


 親はすぐに来てくれて、お母さんは僕を強く抱きしめて怒った。

 何があったのか聞かれたので怪しい道の事を話すと”ノクターン横丁”に行ったのかとまた怒られたが。そこで会った女の子の話をすると、幼い女の子が歩いているという事は”ノクターン横丁”では無いのか?と困惑していた。


 本当にあの女の子は誰だったのだろう。





 また、会いたい。

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