バスジャック事件
爆弾事件でのお礼を安室さんにしようと思います。
ですが、私は安室さんのことをほとんど知りません。
そもそも年齢はいくつなのでしょうと思い本人に尋ねてみましたら29歳だそうです。
童顔ですね。20くらいかと思っていました。
大学の友人でしたらお礼の品は大体はお酒にしますが、安室さんはなんだかこだわりがありそうな感じがしますし。下手に買えません。
迷っていても仕方がありませんので私は休日にデパートへと行き、良さそうなものを見繕い、帰るためにバスへと乗りました。
……ら、そのバスがバスジャックされました。二人の覆面男性が刃物を持ち出したのです。
もう、この世界嫌です。
「それ以上近づくとこの女を殺すぞ!!」
現在おそらく死んだ目をしている私の首もとには鋭利な刃物があります。
休日にも関わらずひ弱そうで若くて動ける乗客が私と小さい女の子供だけでしたので、手ごろな私たちが選ばれ、止まったバスの中でバスジャック犯は私たちを人質にお金と逃走用の車を要求しています。
私が蘭さんのように空手の達人とかでしたらやっつけられますが、私は見た目のとおり魔法が使えるだけの普通な女ですのでされるがままです。
この場合は下手に暴れたら危ないですし。皆様も治安の悪い地域とかでは下手に抵抗しないほうがいいです。命が大事です。
近寄らないのが一番でしょうが。
本当でしたらジャックされた時点でこっそりと逃げようかと思いましたが、バス内に幼い子供がいたのでやめました。
後悔は少ししかしていません。
さて、これがなんの事件に結びつくのでしょうか。
コナン少年は来るのでしょうか。今回こそは来てくださいますよね。
「と、私は期待していたのですが」
来なかったです。使えない。
現在私はバスから移動して、用意された逃走用の車に乗せられています。
車の中には私とバスジャック犯二人と、女の子の四人が乗っています。
バスジャック犯が車に人質用の私たちを乗せたのです。
彼らは私たちを車に乗せるとすぐに用意していましたテープで私たちの目隠しをして後ろの席へ私たちを乗せ車を急発進しました。後ろの席では私、少女、バスジャック犯の順番で座っています。
子供の泣き声とエンジン音がよく聞こえます。
時計が見えませんので正確な時間は分かりませんが、30分程でしょうか。しばらく走ってから車は急に曲がったような動きをした後に急停止をして動きを止めました。
それから、運転席と後ろのバスジャック犯側のドアが開いた音がして、犯人二人の気配がきえました。
泣き声が聞こえますので女の子は横にきちんとおります。
置いていかれたのでしょうか。それともまた戻ってくるのでしょうか。
確かめたくても手も拘束されているため動けません。
『お嬢様!なんておいたわしいことを。テールめが目隠しをお外しいたしましょうか』
「テール?」
『はい、テールでございますお嬢様!』
突然の知った甲高い声に私は驚きました。
どうやらテールが来てくださったようです。テールとは私のしもべ妖精です。
女の子の啜り泣きが止まないところからしてテールは声を私だけに分かるようにしているのでしょう。
とても安心しました。
いえ、いままでじっとしていたのも今、日本に来ているテールが助けに来てくださると信じていたからというのもありました。
「外さなくて構いません。近くに犯人はいますか?」
私はテールが隣の女の子に変に思われないよう配慮してくださっているでしょうが念のために小声でテールに聞きました。
『いえ、あいつらは森の中へ逃げたようです。ここは森の中でございます』
「森?警察はすぐに来るかしら」
『警察は少しこの車を見失っただけでございますので、すぐ近くにいらっしゃいます』
「ならこのまま警察を待つわ。テールありがとう」
警察がいるのなら下手に動く必要はないでしょう。
そう判断してテールへお礼を言いますと『テールめにはもったいないお言葉でございます!』と甲高い声で言い気配を消しました。
テールの言ったようにテールが去った後すぐに車のドアが開きました。
おそらく警察だろうと私は分かっていましたので黙っていましたが、女の子の方は犯人が戻ってきたと思ったのでしょう。大きく泣き声を上げましたが、すぐに安心させるように声がかかりました。
「大丈夫ですよ。僕たちは君たちを助けに来ました」
……なんで安室さんがここにいらっしゃるのでしょう。
その声は安室さんでした。
爆弾事件のことといいさすがに漫画の世界とはいえ遭遇率が高くありませんか?
他人の空似の声なのかと少し疑いましたが、声の主は私の目隠しを優しく外してくださいました。
安室さんでした。
すごく至近距離でしたので安室さんが目の前いっぱいにいました。
そして隣の席では女の子のテープを解いてあげているコナン少年がいました。
「安室さん?」
「はい」
「あの、また助けていただきありがとうございます」
「また貴方だと知ったときは肝が冷えましたよ。助けられて良かったです」
「はい。すいませんでした」
「謝らないでください。貴方は何も悪くはありませんよ。怖かったでしょう」
そうですね。怖かったです。
ですがそんなこと口に出せるような性格ではないので飲み込みます。
「私は大丈夫です」
私は嘘を吐きますと、安室さんは何も言わずに幼い子供にするように私の頭を優しく撫でてくださいました。
その後はコナン少年と安室さんから車の中での出来事などを質問・・・いえ尋問されました。
どうやらこの事件の話は私と女の子の証言からバスジャック犯を探し出すという内容だったようです。
バスジャック犯の二人は空港で逃げようとするところを間一髪捕まえたそうです。
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裏話
コナンと安室が空港でバスジャック犯を捕まえた後。
連行されていく犯人たちを尻目に安室は何か気がかりな様子で顎に手を当て考え事をしているようだったのでコナンは不思議に思い声をかけた。
「安室さんどうしたの。考え事?」
「………いや、なんでもないよ」
逃走車の中でミリアの鞄から見えた男物のプレゼントの袋。
それが頭から離れないなんてそんなこと誰に言える訳もないので安室は口を閉ざした。
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