爆弾事件

交わらずにはいられない。

私は彼に関わらないと決心していたのですが。
どうあがいても事件はやってくるようで。
私は現在、少し前までは大学の校舎の一室であった出口のない瓦礫の中で一人絶望していました。

はい、私の通う大学が爆破されました。
はい、瓦礫により閉じ込められている私のすぐそばにまだ爆発していない爆弾らしき機械があります。
ご丁寧にも時計の表示がどんどん時を戻し0へと刻んでいきます。

あれほど警戒はしてきたのに私は事件に巻き込まれてしまいました。しかも爆弾事件。

本当でしたら魔法使いである私には手段はたくさんあります。その中でも一番手ごろな方法である姿現しで逃げてしまいたいですが、ここに私がいることを同学部の大学生数人に見られたため動くに動けません。
いっそ魔法で爆弾を始末する方法もありますが、不自然ですし。
時計がまだ20分あるので猶予はあります。
いざとなったら姿現しで逃げますが。何とか逃げたと言い訳をしたり最悪はあとで記憶を書き換えればいいことですし。死ぬつもりはありません。
それに、おそらくここまでの大きな事件です。きっとお約束にコナン少年が来ることでしょう。

……いえ、これが事件の前座だとしたら私死にますね。まさか劇場版とかではありませんよね。
ああ、はやく助けに来てください。


そう爆弾を見ながら私が一人願っていますと、天上から音を立てて小さな瓦礫が降ってきました。

見上げますと、そこには人が一人通れるほどのひしゃげた換気口から顔をのぞかせる安室さんがいました。
上はてっきりもうふさがっているかと思いましたが外に出られたのですね。

来るとしたらコナン少年かと思っていましたので驚きました。

驚く私に安室さんは端正な顔立ちに微笑みを浮かべると換気口の蓋を外して鍛えているのでしょう軽々と私のそばへ降り立ちました。


「なぜ、安室さんがここへ?」

「君を助けにね。もう大丈夫です。安心してください」


安室さんは私へ安心させる為か本当に自信があるのか余裕のある笑顔でそう言いますと、すぐにそばにある爆弾へと視線を向けて、持ってきていた黒い鞄から工具を取り出し解体をはじめました。とても手際がいいです。

この世界は爆弾を解体できる人が多いですね。

私はそんな彼のそばへ寄りました。それはなにかあった時にすぐに彼を掴んで逃げるためでしたが。彼は私が不安がっているのだと思ったのでしょう。少しだけ悩んだ様子で私の頭へ手を乗せると「大丈夫。僕を信用してください」と言いました。

なんだかまるで私が甘えているようで気恥ずかしいですが、まさかここで「いえ、間違えて爆発したときの保険として近寄りました」なんて言えないので私はあいまいに微笑み安室さんの様子を見守りました。


「よし、これで最後だ」


最後の赤いコードを切りますと時計の表示が消えました。どうやら解除に成功したようです。


「あの、安室さん。ありがとうございました」

「いえ、貴方が無事で良かったです。助けられて良かった」


さわやかに裏の世界とは無縁なように彼は優しくそう言ってくださいました。

バイト先で何度も見ていますが、安室さんは本当に女性の心を掴むのがお上手です。もしここがコナンの世界でなく彼が怪しい組織に関わる人でなければ恋をしていたかもしれません。
そんなことを考えていますと、まるで計ったようなタイミングで硬く塞がっていた入り口が壊れ、外から警察の人が入ってきました。

入ってきた警察に安室さんは外の様子を尋ねますと、外では毛利探偵が犯人を付きとめたそうです。つまりコナン少年は外で犯人を追っていたのでしょう。
これが事件の前座の話じゃなくてよかったです。


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