go to the next stage

 日本でいうところの修了式である“別れの宴”では、原作にある通りのセドリックの死は語られませんでした。まあ、彼は生きていますしね。語られたほうがびっくりします。
 その代わりにダンブルドアはハリー・ポッターに第三の課題で何が起こったかということを話しました。つまりはヴォルデモート卿の復活についてです。

 私はヴォルデモート卿が復活したという話をセドリックが生きている今、信じる者は大幅に減るのではないかと思っていましたが、杞憂だったようです。

 ダンブルドア校長の言葉には強さがあります。大広間にいるみなが真剣に彼の言葉に耳を傾けていました。
 強い友情と信頼の絆を示すようダンブルドア校長は言いました。
 私には誰が味方で誰が敵か大まかに知っていますが。何も知らない人にとってそれは難しいことでしょうね。

 ハッフルパフの方へ視線を向けますとセドリックもダンブルドアをじっと目をそらさずに見つめていました。

 …彼はどう思っているのでしょうか。
 考える必要もないでしょうが。
 彼は素直で良い人で頭も悪くありません。しかも目の前でハリー・ポッターが攫われているところを見ているのです。
 ヴォルデモート卿が復活したと信じたくはないと思うかもしれませんが、それでも彼はおそらくは信じると私は思っています。

 とはいえ原作に今は存在しなかった彼の行動は未知数ですが。
 彼は来年からどのように行動するのか推測しにくいです。
 まさか死喰い人になることはないでしょうが。セドリックの友人になったことは彼の動向を探るためにも悪いことではありませんでした。



 別れの宴の後はスチュワートに話しかけられました。頂く猫についての話です。

 「私はテールから子猫を飼う許可をいただけましたが、他の子猫の飼い主は見つかりましたか?」

 「ああ。ディゴリーのおかげでむしろ足りすぎるくらいに里親が見つかったよ」

 「そうですか。なら良かったです」

 「ああ。子猫なんだが、ミリアは毛色に好みがあるか?一応これが写真なんだが」


 スチュワートから渡された写真には兄弟同士でじゃれ合う可愛らしい子猫たちが写っていました。これを引き裂いてしまうのは少し心が痛みます。
 子猫は前にスチュワートが言っていたように茶色や黒の子猫でした。


 「私はこだわりはありませんから。可愛いですし、どの子でも構いません」

 「分かった。子猫は来年度ホグワーツに連れてくるのでいいか?もし早く受け取りたいなら夏休み中にどこかで待ち合わせをしてもいいけど」
 
 「いえ、学校でお願いします。少しでも長く親猫と一緒にいさせてあげたいですし。スチュワートが良ければですが」

 「俺はどちらでも構わないよ。なにしろ急だったから貰ってもらえるだけで有り難い」


 まあ、私が名乗り出なくともセドリックのおかげで里親は見つかったようですが。
 写真を見つめます。
 これについては来年度が楽しみです。


 「それと。スチュワート、貴方に聞きたいことがあるのですが」

 「なんだ?」


 私は声の聞こえる範囲に人がいないことを確認して、静かにスチュワートに尋ねました。


 「ダンブルドア校長の話についてスチュワートはどう思いますか?」

 「…とりあえずは様子をみるつもりだ。俺の両親は、全盛期には他国にいたからどちらにも属してはいなかった」

 「そうですか。答えてくださりありがとうございます」

 「いや、いい」


 スチュワートの状況について聞いておきたかったのですが。思っていたよりも簡単に教えてくださりました。
 話が本当でしたら彼は現時点ではヴォルデモート側ではないようです。まったく信用するのは危険でしょうが。
 個人的には彼を信用したいとは思っています。

 スチュワートは私について逆に尋ねてはきませんでした。興味がないのかと思いましたが、よく考えれば私の家はマルフォイ家ほどではありませんが有名ですのでスチュワートは私の家はヴォルデモート側でなかったことは知っているのでしょう。
 前に親に念のために尋ねましたが、彼らが言うには私の家は中立に近い立場だったそうです。
 ヴォルデモート卿に属さなかった理由は知りませんが。
 でもあの両親なら誘いがあってものらりくらりとヴォルデモート卿から逃げそうです。
 今も時々送られてくる変テコな生き物と写る写真以外何をしているのかよく分かりませんし。


 「スチュワート、貴方にお願いがあるのですが」

 「お願い?」

 「これです」


 私はスチュワートに頼み事を書いた小さな紙を見せました。
 紙で伝えるのは今は周りに人はいませんが、それでも誰かに聞かれることを防ぐためです。
 そこに書いてある文字を読んで、スチュワートは分厚いメガネ越しに無表情だった顔に少しだけ驚きを浮かべました。


 「無理なら構いませんが」


 私は魔法で紙を証拠隠滅のために燃やしながら尋ねました。


 「いや…。ああ。分かったやってみよう。だけど理由はなんだ?」

 「申し訳ありませんが、理由を聞かずに教えていただきたいのです」

 「…分かった」

 「ありがとうございます」


 スチュワートはソレに頷いてくださいました。
 拒否される可能性は高いと思っていましたが。そうしたら別の手を考える必要がありましたので、私はスチュワートに感謝しました。

 その後はスチュワートと別れて荷物を詰め終えて一人玄関ホールへ向かいました。

 その途中、ドラコ・マルフォイと目が合いましたが、すぐに目を逸らされました。
 いつものことなので仕方がありません。彼は私に何かをしてくる訳でもありませんし。
 原作と関わりたくなかった時はそれが助かっていました。

[ 60/179 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]