prologue:b
それから、魔法使いということ以外とくに大きな事柄は何も無く過ごしていましたが、私が十歳を迎えたときにまたしても理解を超える事実が判明しました。
夜に部屋で本を読んでいると何かがコツコツと部屋の窓をノックしました。見るとそれは大きな灰色の梟でした。
梟は魔法使いの間では手紙のやりとりに利用されています。
私はなんでしょうと思い窓を開けてその梟を中に入れました。すると、彼(彼女?)は一つの白い手紙を私に差し出しました。
私が受け取り手紙の宛名を見ますと、その手紙には金色の文字で”ホグワーツ魔術学校”とありました。
・・・・・・・
一瞬絶句して私は白い封筒を破くように封を開け内容を読みました。
手紙には、私には魔法の才能があり入学可能と言うことと、学校で必要なものが記されていました。
・・・この”ホグワーツ”と言う固有名詞を私は前世で知っていました。これは児童書”ハリー・ポッターシリーズ”に出てくる主人公の母校です。小説が好きな私はこの本を全巻読んだことがあります。非常に文章が読みやすい本だと驚かされました。
・・・その小説の学校がなぜ出てくるのでしょうか。
そういえばと、私はその本の内容を思い出しました。
屋敷しもべ妖精や、ダイアゴン横丁、動く絵など”ハリー・ポッター”に出てくる事柄は沢山ありました。
・・・何故、気が付かなかったのでしょう。
私は前世の旧友の言葉を思い出しました。
『××ってさ、しっかり者に見えて。案外天然だよね。』
”天然だよね”
・・・・・・・・
・・・認めたくはありませんでしたが、現在の状況では否定ができないのが悔しいです。
ああ、本当に何故気がつかなかったのでしょう。
とにかく、と私はその考えを振り払うとすぐにしもべ妖精を呼びました。
本当なら親を呼ぶべきですが、私には現在親がいません。
実質いますが。私の家では5歳を超えたら自立を促す為に、親は子の元を離れるという決まりだか家訓だかがこの家にはありました。
ですので五歳を過ぎれば、子どもの面倒は屋敷しもべ妖精に託されます。
・・・本当になんてめちゃくちゃな家訓なのかと初めは思いましたが、中身成人している私からしたら逆に楽なことに気が付きそれを決めた先祖に感謝をしました。
・・・私にもし子どもが生まれたらこの家訓を闇に葬りますが。
それに親がいないとはいえ、一応古い由緒ある家柄のようで養育費の方はかなり有ります。
普通に生きていれば一生仕事しなくても良いのではと思うほどのお金を残されました。
この家というより屋敷も好きに使って構わないそうなので、家の問題もありません。
親には10歳になるまではこの屋敷で過ごしなさいと言われていたのですが、この手紙が来たことで意味がやっと解った気がしました。
もっと早くに気がつかなかった事が本当に悔やまれます。
[ 4/179 ][*prev] [next#]
[mokuji]