sissy




sissy/鉢屋


好きな人が目の前にいたとして、その好きな人に「好き」だと正直に言えるものだろうか。


「見て見て雷蔵、新しいピアス買ったんだぁ」

「わぁ、よく似合ってるよ(^∀^)ちゃん!三郎もそう思うよね?」

答え、言えるわけない…!

どうすればこの女に好きだとか可愛いだとかが言えるんだよ、ありえないだろ。

「変」

「…相変わらず失礼な奴」

(^∀^)は口を尖らせた。

俺の日課は名前を怒らせること。別にそうしたいわけじゃないが、俺の口からは気持ちと逆の言葉しか出てこない。


「それに比べて雷蔵は優しいから大好きー!ぎゅー!」

「わ!(^∀^)ちゃん!?」
「なっ…!」


そんな俺の性格が災いしてか、(^∀^)は俺に惚れるどころかどうやら雷蔵の優しさに惚れてしまったらしい。最悪だ。

「だ、抱きつくな離れろよ!」

「いーや!雷蔵にくっつくと落ち着くんだもん!」

雷蔵にくっついたまま俺にベーッと舌を突き出す(^∀^)はなんて憎たらしい奴なんだと思う。…人の気も知らないで。


「(^∀^)のバーカ」

いちゃつく二人を見るのが嫌で顔を背けて不貞寝の体勢をとる。幾ら視界から姿を追い出しても会話は耳に入るんだけどな。

「駄目だよー(^∀^)ちゃん、」

「良いの!」


二人の弾む声にイライラが募る。雷蔵の奴、駄目だとか言いながら嬉しそうじゃんか。自分が素直になれないのが悪いのに、つい(^∀^)に好かれている雷蔵に苛立ちを向けてしまう。あー…俺って嫌な奴。二人の会話を聞かないように大音量にしてヘッドホンをつけた。でも直ぐにヘッドホンを誰かに取り上げられて顔を上げる。

「…何だよ」

「別に」

俺のヘッドホンを持っていたのは、さっきまで雷蔵と話していた(^∀^)だった。雷蔵は向こうで他の奴と話している。

「…雷蔵と話してれば?」

我ながらガキっぽい台詞に嫌気がさした。でも、喧嘩友達の(^∀^)に対して優しい言葉なんかかけられるわけないんだ。たとえ(^∀^)が雷蔵のことが好きだとしても、俺のことだって友達として理解してくれていると思う。


…自惚れかもしれないけど。

「…三郎は、」

「?」

「三郎は…雷蔵みたいに優しくないし意地悪ばっかり言うからムカツクけど、」

「…」

「本当は私のこと大切に想ってくれてるから、好き」

「…え?」

驚いて顔を上げると(^∀^)は視線を逸らしながら恥ずかしそうに笑った。これからは少し正直になろう…そう思わせるような可愛い笑顔だった。


sissy

やっぱり君は俺の理解者

(駄目だよー(^∀^)ちゃん、三郎に妬かせたいからって!)

(良いの!少しくらい私に困ってもらわなきゃ!)




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