望んだその先に。
ドクドクと、僕の心臓は壊れてしまうんじゃないかと思うくらいに動いている。
僕の部屋で勉強をしようと言ってきたのは★だった。何も考えずに頷いてしまった一昨日の僕を呪ってやりたい。家族は丁度出掛けていて、この空間には僕と★しかいない。しかも帰りは遅くなるとメモが残されていた。
いつもは三郎達が一緒であまり2人で居る時間を作れなかったから、この状況は嬉しいは嬉しい。けれど、僕だって男なんだ。★とキスもしたいし、それ以上だって進みたいと思ってしまう。
ちらり、と正面に座っている★を盗みみる。★は真剣な表情で数式とにらめっこしていた。
★は、この2人の空間をどう思っているんだろう。真面目に勉強しているし、もしかしたらそんな事望んでいないかもしれない。
課題に集中している★を見つめていると、急に★が視線を上げた。
「雷蔵、さっきから手ぇ止まってる。疲れた?」
僕の考えている事がバレないかとあたふたしていると、★は笑いながら休憩しようか、といって足を崩した。
「あ、じゃ…じゃあ僕飲み物持ってくるねっ!…ぁうっ!」
立ち上がろうと、テーブルに手を掛けて足を立てようとしたが、長時間座っていたために足が痺れてへたり込んでしまった。
「え…雷蔵、足痺れちゃった?」
きょとんとしている★はかわいい、けれど僕はその顔を見つめているどころではなかった。
「っあ!…そ、そうみたい…。」
痺れにこらえている僕の傍に、★が無言で近づいてきた。
「えい。」
満面の笑み、とは正にこの事だろう。★は笑顔で痺れている足をつついてきた。
「ひっ…!★!何して…!?」
つつかれたかとおもったら、上半身を倒された。床に後頭部を打ちつけ、痛みをこらえていると、★が僕の頭の横に両手を突いて見下ろしていた。
「え…★?」
現状を掴めない僕に、微笑んだ★が僕の耳元でそっと囁いた。
「らいぞ。もう無理、かわいすぎ。襲っていい?」
僕の答えを聞かずにこの日、僕は望んでいたその先と、男としての大切な何かを失った…。