愛に飼い慣らされる



「私ね、小さい頃からすごく犬が飼いたかったんだ。おっきくてもふもふして従順なわんちゃんに憧れてて、でもうちのマンションじゃ犬飼えないから諦めてたんだけど。」


うん、飼いたい理由も飼えない経緯も分かった。理解した。でもな、


「俺は犬じゃねー!!!」


喚いてみたが笑いながらよしよし、と頭を撫でられただけで効果は皆無。俺は★の彼氏ではあるがペットになった覚えなど全くない。

今日だって、普通に★の家へ遊びに来ただけなのに。待っていたのはいつも以上に笑顔で迎える★と首輪と犬耳カチューシャともふもふの尻尾だった。


「これ、可愛いでしょ?ちょっと垂れた犬耳ともふもふ尻尾、結構安くて思わず買っちゃった!この首輪もはっちゃんに似合うと思って。」

買っちゃった!って笑顔はすっげー可愛いんだけど、な。首輪似合うって、俺人間なんだし。そんな趣味な…


「はっちゃん、だめ…?」


潤目の上目遣いは卑怯だろ。頷いてしまった俺を見て溢れんばかりの★の笑顔。あぁ、これが惚れた弱みというやつか…。


3分後、犬耳カチューシャと尻尾、そして赤い首輪をつけた自分自身を鏡で見る。やべぇ、俺泣きてぇ。


「かわいい!はっちゃんすっごいかわいいよ!」

俺に飛びついてぐりぐり抱きしめる★の方が断然かわいいんですけど。


「はっちゃん、おすわり!」


びしっと人差し指を立てて真面目な顔でおすわりと言われても、と戸惑う俺に駄目押しのお座りコール。

仕方なく床に胡座を掻いて座ると★にくしゃっと撫でられた。


「はっちゃん良い子だねー、じゃあご褒美。ね、」


★の言葉に顔を上げると、ちゅっと言う音とともに俺の唇に触れた柔らかいもの。思わず★の腰にタックルもとい、抱きつく。


★の傍に居られるなら、もう犬でも何でもいいや。


「はっちゃん大好きよ。」


「わんっ!」


なんてな。

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