胎児の揺りかご



★は何か辛い事があっても、何も言わない。ただ押し黙って、ベッドの上で胎児のように体を丸めて自分を何かから守るようにうずくまり、声もあげずに泣いている。


何があったかなんて知らないし、聞いた所で僕にも三郎たちにも言わない。迷惑をかけたくない、心配させたくないという気持ちがあるからなんだと思う。



「ただいま。」


仕事を終えて帰ると、いつもは飛んできて抱きついてくるのに物音ひとつしなかった。また、何か辛いことがあったのだと一緒に暮らした経験が言っている。


キッチンにはラップにくるまれた夕飯が待っていたが、そのまま寝室へと直行する。案の定、ベッドの上で丸まっている★がいた。


カバンと姿を床に置いて、丸まった★の背中側に座る。泣き顔は見られたくないと思うから。そっと前髪をどかすと顔は涙で熱く濡れていた。いつから、どれだけ泣いていたのだろう。


「★…。」

そっと声をかけると、返事の代わりに鼻をすする音が聞こえた。


僕もベッドに横になり、★の体を後ろから包むように抱きしめる。


僕は何も言わない。気休めの言葉は必要としていないだろうから。


泣いて、泣き疲れて眠ればいい。★の心が休まって、また笑顔で僕に笑いかけてくれるまで抱きしめるから。★の呼吸が寝息になるまで、僕が君を包んで守るから。


おやすみ、★。

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