優しい嘘
ネイルアートが嫌い。色素の抜けた髪が嫌い。巻き髪が嫌い。きらびやかなメイクが嫌い。下心を露わにした服が嫌い。それが、彼の嫌いな物。
そして、それはすべて私に当てはまる事。
彼はそれが嫌いなクセに、私に似合っていると褒めてくれる。
それは、私に向けてくれる優しさなんだろう。でも、私は気付いてしまったんだよ。貴方が無理をしてる事に、だって貴方は嘘を吐くとき困った様に笑うから。
「ねぇ、疲れた?」
「ん?…ううん、全然疲れてないよ。」
ほら、また困った笑顔を貼り付けている。
知ってる?雷蔵の困った顔を見る度に私が傷ついてる事。
「そっか、私疲れちゃったからそろそろ出ようか。」
最近は彼の嘘を見抜けるようになった。そして嘘を見てみぬ振りをするのにも慣れてきた。
「雷蔵。」
貴方の優しい笑顔が好きだったのに、
「どうしたの?」
今の私の瞳に映る笑顔は大嫌いなの。
「…大好き。」
大嫌い。
「僕も、★が好きだよ。」
ほら、また困った顔。
優しい嘘を吐く君が、憎らしい程に愛おしい。
貴方から嘘を剥がせない。剥がしてしまったら貴方、行っちゃうでしょう?だから、離してなんかあげない。