心に刻むは、君の雄姿。
ずっと心に誓っていた私の目標。
これが最後のチャンスだった。
高校、最後の大会のスタメン発表。ずっと補欠だった私の、最後の望み。
スタメンに入ることが私の高校の目標で、朝練も夕練も、自主練だって毎日頑張った。やれることは全てやったんだ。先生の発表を、全神経を耳に集中させて聞いた。
私の名前は、呼ばれなかった。
だだっ広いコートにバレーボールを持って、私は1人で立っていた。
勢いよく体育館の重い扉が開いた。そこには外練で全身泥だらけの、男バレ主将兼私の彼氏が息を切らして立っていた。
「★!どうだった!?」
ドタドタと私の目の前まで来る小平太に、私は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
黙って首を振る。
「だめ、だった。小平太にせっかく毎日練習付き合ってもらったのにね…。」
小平太は、ずっと私を励ましてくれてアドバイスもくれた。小平太だって、私の練習に付き合うよりも自分の練習をしたかっただろうに。
こんな自分が不甲斐ない。
「こへ、…ごめんね。一緒に、大会…出たかったよう…。」
ぼろぼろと、涙が頬を濡らす。涙を拭おうと、持っていたバレーボールから手を離す。
体育館に、私の醜い嗚咽とボールの弾む音が響いていた。
落ちたボールを小平太が拾う。そして無言で反対のコートへと歩いていった。
「★!」
ボールを高く上げ、助走をつけて飛び上がる小平太。私に向かって一直線に豪速球が飛んできた。
条件反射というか、体に染み付いたというか、思わずボールをレシーブした。勢いはいなしたものの、小平太が打つスパイクは弧をを描いて小平太の下へと戻っていった。
「★、最初は俺のスパイク取れなかったよな。」
私は呆然としたまま、やっとの事でこくりと頷いた。
「でも、ちゃんと返せるようになったじゃないか。」
また私は頷く。小平太はずっと、女だからって、彼女だからって手加減なんてしなかった。私が手加減されるのが嫌いってわかっているから。
「ずっと、見てたから。★が頑張ってるの。俺の無茶な練習にも弱音なんて吐かないでついてきたのも。全部、俺が見てたから。」
ぼろぼろ、ぼろぼろ。
また私の顔は涙でぐしゃぐしゃになった。小平太が私の前に来て、タオルで私の涙をわしゃわしゃと拭う。
タオルから小平太の汗の匂いがする。私は胸いっぱいにその匂いを嗅いだ。
小平太の大きな手が私の頭をぽんぽん、と撫でてくれた。
「うん。もう、大丈夫。」
大丈夫。小平太から元気を貰えたから。
小平太の背中に手を回して、全力で抱き締めた。
「小平太!私の分まで頑張ってね!」
小平太も負けじと私を抱き締め返す。
「おう!★も全力で応援してくれよ!」
当たり前じゃないか。小平太が私を見ていてくれたように、私も小平太が頑張っている姿を見てきたのだから。
小平太の高校最後の活躍を目に焼き付けよう。それが、今からの私の目標。