非日常がやってきた



静まり返ったアパートで、そろそろレポートを切り上げベッドに入ろうと腰を上げた時、ふいに玄関のチャイムが鳴った。

こんな夜中だ。新聞勧誘や宅配便でもないだろう。大方終電に乗り損ねた伊作か飲み会後の小平太辺りだろうとドアを開けると、思いがけない人物が立っていた。


「あ、潮江。泊めてくんない?」

俺の目の前には、大きなカバンを抱えて膨れあがったリュックを背負ってる同じ大学の神田が立っていた。


「じゃ、お邪魔しまーす。」


状況が理解出来ずに固まっている俺をスルーして、神田はさっさと部屋の中に入っていった。


「ちょっと待てバカタレ!ど、どういう事だ!」

荷物を下ろし、俺が先程まで使っていた座布団に腰を下ろした神田にやっと言葉を発すると、カバンから荷物を出しはじめた神田が面倒くさがりながら話を始めた。


「えー。私、家賃滞納しちゃったんだよね。レオパ・レスって1日でも家賃遅れると鍵変えられて住めなくなっちゃうの。んで潮江のアパートが近いし1人暮らしにしちゃあ広いって聞いたからさ。」

「おいちょっと待て。そんな情報誰が教えた?」

「仙ちゃんとこへちゃん。最初こへちゃんち行こうと思ったんだけどオール真っ最中で潮江んちは?って言われて。仙ちゃんはご丁寧に住所と目印まで教えてくれたから私も迷わなかったの。」


俺は眩暈のような感覚に陥った。小平太はともかく、仙蔵のヤツがいい笑顔で俺に笑いかけている様子が俺の頭の中で容易に浮かんだ。


仙蔵、一体俺にどうしろと言うんだ。


「と言う訳で、潮江!よろしく!」



(俺の日常を返せ)

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