隔絶された世界で泳ぎたい
言葉を紡ぐ前に柔らかな唇に塞がれた。
俺が舌を入れたら答えるように☆が舌を絡める。
ヤニ臭いが嫌な味ではなかった。
もっと、と催促する様に☆の後頭部を俺の方へ寄せ☆の体をくるりと反転させる。
左腕で自分の体を支え、空いた右手でブレザーとシャツのボタンを外していく。
薄目を開けて☆の顔を盗み見た。
その表情は酷く扇情的で俺の欲望を誘うのに、それと同時に背徳感に襲われた。
俺は☆の腕を頭上へ纏め上げ、唇を離す。
☆は何故?と言いたげな表情で俺を真っ直ぐに見つめる。
俺の中の欲望が邪魔をするなと心を暴れ回る。
「なんでハチが好きなのに俺を誘った?」
☆が眉を僅かに顰めた。
なんでそれを聞いちゃったの?って顔をしている。
「なんでわざわざハチと一緒に居る俺に目をつけた?俺とこんな事したら尚更ハチに気まずいじゃねーか。」
どう考えたって俺の頭では答えを導けなかった疑問。
何も考えずにやればよかったのに、何故聞いてしまったんだろう。
☆は変わらずにまっすぐ見つめる。
「鉢屋なら、あたしに興味を示さないと思ったから。」
☆から、言葉が、涙が決壊したように溢れ出る。
「竹谷から離れたいから、竹谷にあたしの汚い部分を見せたくないから…。だから…」
壊れてしまいそうに辛いなのは☆なのに、何で俺の心は誰かに心臓を鷲掴みされたように痛いんだろう。
こんな痛みは随分前に置いてきたはずだった。
こんな逃げだしたくても逃げられない辛さはとは無縁のはずだった。
今ならまだ間に合う。このぐちゃぐちゃした感情を☆に吐き出そう。
強引に☆の口をこじ開け、めちゃくちゃに口内を蹂躙する。
このまま、ぐちゃぐちゃにして欲望と一緒に俺のぐちゃぐちゃな心も一緒に吐き出せばいい。
涙も、俺の行動も止められない☆は俺にされるがままだった。
この世界に、☆と俺だけなら良かったのに。
心の中で、その考えを嘲笑った。