ありふれた日常から零れたもの





俺以上に掴めない女、そう思った。


西日がグランドを照らし、部活動に励んで青春してるヤツらの影を長くする。


窓際の後ろから2番目の席で、俺はじゃがりこを食べつついつもの3人を待っていた。



バイブで携帯が机を這いずり回る。


サブ画面に名前が表示されるが、顔は全く思い出せない女子の名前。



遊びとわかっていても俺の彼女に成り上がろうとする女たち。


可哀想に、

おれが与えてあげられるのはザーメンぐらいだ。


「ねぇ。」


扉に違うクラスの女子が立っている。たしか、兵助と同じクラスの女子。



「鉢屋、いくらだったらあたしとやる?」


くわえていた食べかけのじゃがりこが床に落ちた。


「俺が金出す方?」


前に兵助が☆って呼んでいた女子だった。



「あたしが金を出す方。」



☆が俺の目の前に立ちはだかる。



俺は上から下までじっくりと眺める。



「気持ちいいならプライスレスだね。」意外だ。



別に五月蝿いギャルでもない普通の子がやりたいだなんて。


「あ、そ。じゃあ暇な日相手してよ。それじゃ、」


そして、何事も全くありませんでした。とでも言うように平然と俺の前から☆は消えていった。



「って…アドレスも何も知らないんだけどー。」


そんな俺の声は☆に届かず教室に響くだけだった。


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