恋に堕ちた瞬間




席替えをしました。窓際の一番後ろ。普通ならいやっほおおおおおおおい!!!となる席。私もなります。普通なら。隣の席は仁王くんでした。






私が最大にして最強に苦手な相手。仁王雅治。いつも彼の周りには香水の匂いがプンプンする厚化粧の女の子達がいて、仁王の一挙手一投足にきゃあきゃあ言ってます。そりゃ私も一応女子だし、仁王を見て格好いいって感情を持たない訳ではないんだけど、仁王は苦手。というか目立つ人が苦手。私は勉強も恋愛も適当にして、地味にそこそこ楽しく青春ライフをすごせたらいいなあ、って思いながら学校生活を送ってるから、仁王含め我が校のアイドル的存在なテニス部の人達とは出来る限り関わりたくないんです。


「消しゴム貸して」
「!?………あ、はい」

"あ、はい"って我ながら何だ。いきなり仁王に話しかけられたからって"あ、はい"て、普通は"いいよ"とか"どうぞ"とかだろ。いや、しっかし改めて仁王の顔を見るとイケメンだった。ミーハーだけど格好いいもんは格好いいもんね。ていうか何で今のタイミングで消しゴム?今4限目だよ?ないならもっと前に借りるくない?この今日1日4限目までノート間違えず書いてたの?え、もしかして仁王はノート間違えない天才?


「あんがと」
「あ、うん」


ぽん、と手の上に消しゴムを返された。うわー、色白くて長くて綺麗な指。綺麗だけどがっしりはしてるなんて、やっぱり男子なんだな仁王も。そりゃ毎日テニスラケット振ってたらがっしりもするよね。て、あれ?なんで私の手の上にまだ仁王の指あるの?


「あの、仁王、手」
「ん、なんじゃ?」
「いや、手、どけないの?」
「…どけんとならん?」
「え」


いやいやいや、なんで私の手の上に乗せとかんとあかん?なに、どういうことなの仁王。ていうか心なしか仁王の指が私の手のひらから私の指の方に移動してる。いや、心なしじゃなくて絶対移動してる。だってなんか今すぐにでも手繋ぎそうなんですけどおおおおおおおおおおおお!?(某漫画の甘党銀髪キャラじゃないよ☆)


「にっ、仁王!?」
「細っこい指じゃのお、ちっこいし」
「え、いや、あの」
「凄い白いし綺麗じゃ」
「え、ええええええ、えっと」
「どもりすぎじゃ、…可愛い」


分かんない、意味が分かんない。なにこれ、え、授業中に仁王に口説かれてる?私が?立海大附属中のアイドル仁王に?からかわれてるだけ?いや、からかわれてるにしても困る。これは困る。やっぱイケメンだし、アイドルだし、格好いいし、仁王にこんなこと言われてドキドキしない訳ないじゃないか!私、今絶対顔赤いって。やだ、恥ずかしい、仁王の前で赤面するなんて。そんな展開は私の青春ライフの台本にはなかったぞ、うん。


「繋いでもよか?」
「えっ、繋ぐ!?て、手を?」
「他に何繋ぐんじゃ」
「いや、でも授業中だし、ノートとか…」
「俺は右手繋いでも左利きじゃから全然平気じゃ。お前さん左利きじゃったっけ?」
「……右利き、です」
「ならお互いに問題なしじゃ」


問題はあると思います仁王くん。って言葉を口にする前に、手はあっさりと繋がれてしまった。……問題、あるよね?え、只のクラスメートで授業中に手繋ぐって変だよね?駄目だ。完全に仁王のペースにハマって混乱してきたぞ。落ち着け私。深呼吸。そう深呼吸。すーはー。すーはー。


「ぶっ、なに深呼吸してるんじゃ」
「あ、えっと、これは…」
「やっぱり面白いのお」


そう言って笑った仁王くんがあまりにも綺麗で格好よくて、でも何だか可愛いくて、心がぎゅっと締め付けられました。



(次の問題は、仁王!って、お前ら何手繋いでるんだ)((クラス中の視線が集まって、その後1ヶ月程私と仁王が付き合ってるとか噂になって、なんかもう死ぬかと思いました。))








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この後ヒロインちゃんに地味な青春ライフが二度と訪れない、っていうのはまた別のお話。

 

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