何でこんな大量の荷物を一人で運ばせるかな・・・・
あーあ、誰か友達についてきてもらえばよかった。
ぐだぐだとそんなことを思いながら、資料室への長い道のりを歩いていた。
いつもの事だけど、本当にこの学園て広いよねえ・・・・
入学してもうすぐ1年経つけど未だに迷いそ――――って、
「うあっ!?」
気がついたときには片足が空を蹴っていた。
目の前見えなくて階段だって気づかなかったあああああ!!
こっ、こける・・・・!
全身にかかるであろう衝撃に対してぎゅっと目をつむった時、
別の力が私にかかった。
強く腕を引っ張られたのだ。
「へっ?」
その力に逆らうこともできず、
「っと…危ない危ない。名字さん、ちゃんと前を見なよ?って、こんなに荷物があるんだから無理か。」
「み、みずしま、せんせ・・・・」
助かった・・・・感謝、しなきゃ。
そしてふと、目の前に手が出された。私、こけてないんだけど・・・・
「…?」
「荷物、少し持ってあげるよ」
「い、いえ!おかまいなく」
「ふーん。じゃあ、またこけそうになってもいいんだ。その時は僕、見かけても助けてあげないけど?」
「・・・・・・お願いします」
前言撤回。
水嶋先生は意地悪だ。
* * * * * *
「水嶋先生、ここまで運んでくださってありがとうございました」
「別に大丈夫だよ」
「それに、階段から落ちそうなところも助けていただいたし・・・・」
「じゃあ、階段から落ちなかったんだから、僕と恋に落ちてみない?」
そんな声が耳元で聞こえたような気がした
「えっ・・・・・」
「冗談だよ。今度こそは転ばないように気をつけなよ?名前ちゃん」
そう言って先生は去っていった。
今、下の名前・・・・・
階段が告げる
(あんなベタな台詞でも少しときめいただなんて、言えない)
10/12/01 柚葵夜