▽140字以下作品一覧



















 
 
 
▽まとび

口の中が粘つくのは緊張で渇いたせいだろうか。少し声が掠れる。冷や汗が伝う。広い屋上のうちには俺一人。もう一人がフェンスの向こう側にいる。足を踏み外しでもしたら…。「お巡りさんが引き上げてよ」そう緩く笑った金髪が、橙の空に融けそうで。強風と共に思わず強く地を蹴った。





























 


▽まとび

ターミナルの屋上は何処よりも高くて最高の気分だって聞いたのに。「なんだ、テメェ」もう少しお前が来るのが遅ければ、空も闇色に沈んでこの褐色の肌も見えなかったろうに。冷や汗を滲ませる銀髪を見て、自分の手の平も汗で粘つくことを認識する。どうして俺をただの機械に作ってくれなかったんだ。




























 


▽草汰

紅に染まった屋上で、いきなり背後から現れた銀髪に冷や汗が流れた。まさか、見られたのだろうか。「土方、また泣いてるの?」彼女を想って?どこか常と違う表情に否定が一瞬遅れた。口を開く前に甘い香に包まれ抱き締められたのだと理解する。耳に響く粘ついた水音と、声「わすれさせて、あげよっか」


































 


▽草汰

夕方、ふと風に当たりたくなって屋上に上った。橙色に染まった彼の煙草の消し痕に甘い笑みが込み上げる「せんせい?」聞き慣れた声にバッと振り返ると思い浮かべてた彼、と同じ顔をした褐色の肌の誰か。「なぁアンタ、俺を抱いてみねぇ?」粘ついた笑みの意図に気付き冷や汗が流れる「損はさせねぇよ」




































 


▽葉摘

放課後の屋上、雨上がりの夕焼けを背負う様に土方は座り込んでいた。彼の白衣を瞼裏に浮かべ、馬鹿みたいに手を動かす。土方、と彼の声が頭に響いた瞬間目の奥が熱くなって、それから溜息が漏れた。粘つく糸のつたう右手を空に翳せば真っ赤に染まって、まるで傷口から流れる血みたいにずきんと痛んだ。

































 


▽了子

この世の終わりのような落陽だった のどが乾いて咥内がべとついていた せりふのひとつも出てこないほどだった さらうことが出来たらどれほどよかったろう まぶたを閉じたきみはとめどない涙とともに落陽の中へ落ちた へたくそな恋が終わった瞬間を見た俺はただふるえた
 
 





















 




 

 
▽遥歌

開いた屋上の扉の向こう、佇む彼に向かい合うのは俺より幾分ちいさな体。綺麗なオレンジのグラデーションを背景に、飛び交う言葉はべたりと粘つく甘さを孕んでいて。咄嗟に踵を返した俺の背中を、「覗きなんていい趣味してんね土方くん」じとり、愉しそうに歪んだ声と冷や汗が伝う。
 
 


























 
 
 
▽我妻悠

冷や汗が背中をつう、と落ちていく。(誰かに見られたりしたら、)しかし右手が弄るのを止められない。(せんせい、)夕焼けが俺の悲惨な影をこれでもかと映していて、なんだか恥ずかしくて、でもやっぱり興奮した。「…へえ、風紀委員がこんなところで自慰?」粘つく薄笑いが夏風の吹く屋上に響いた。



 
 




















 
 

 
▽miku

屋上なんかでするんじゃなかった。頬を伝う冷や汗をベロリと舐められ達したばかりのものが反応する。粘つく俺の指にまで舌を這わせる銀髪は艶のある笑みを浮かべネクタイを緩めた。「もっと見せて」夕日に染まる頬は羞恥と期待でより一層赤く色付いてそれをごまかすように乱暴に唇を重ねた。




























 


▽宇野

立ち入り禁止の空間とはいえ隣の棟からでは用意に見つけられるのだ。内心冷や汗をかきながら、しかしその緊張が逢瀬を重ねる後押しをしたのも事実だった。夕陽に融けた熱が肌に粘つく。こうして居られるのももう数える程だろう。淡く色づく白衣の裾を握ると、こっち、と掬い上げられた手に指が絡んだ。



























 


▽宇野

フェンスに手をかけ見下ろすと、朱く染まるビル群が一瞬荒廃したあの日の黄昏に見えて汗がふきだした。まだ生きてんのか。鼓膜にねっとりと粘つく声が囁く。頭を振っておもう、あの黒い瞳が見たいと。 おい、 不意に掛けられた声に振り向くと、強い瞳が隠しようのない気遣いを湛えてそこにあった。





























 


▽冠崎

「土方、これ見て」坂田は屋上で夕焼けに染まった髪を輝かせながら嬉しそうにそう言った。指さす先には黒い物体が動いている。ぬるぬると粘ついている、一目でわかった。坂田はその物体をひとつ掴んで俺の方に向ける。「気持ちいいこと、しようか」冷や汗が、止まらない。坂田がにやりと笑った。




























 


▽冠崎

坂田は俺の腕を引っ張って屋上まで連れてくるといきなり噛みつくようなキスをしてきた。やけに夕焼けが明るくて綺麗だったから目がくらむ。唾液が粘つくくらいの激しいキスにもくらくらする。ようやく口を離すと坂田は悪い笑みを浮かべていた。「イかせてやるから早く脱げよ」冷や汗が伝うのを感じた。
 




























 

 

 
▽曖紗
 
冷や汗が背中を伝い、秋風に流される。粘つく口内は音を発せようと開いたまま。フェンス越しに見える黒い影は明らかに恋人のそれで。「…じ…た……」最早単語ですらないそれに、彼は反応しこちらを向く。「バイバイ、坂田」笑顔でそう言い綺麗な夕焼けに黒が混ざり、最愛が地に落ちた。
 
 

























 
 
 
▽lily
 
「俺はお前なんか好きじゃない」冷や汗が背中を伝っていくのを感じながら睨み付けた。夕焼けが綺麗な屋上で俺を押し倒しその顔を逆光で隠している銀時は、対して含み笑いのようなものを漏らした。「ココそんなにしといて何言ってんの?」見えないはずのその粘つくような視線に、絡め取られる気がした。
 



























 


▽lily

「ハイ、お弁当」「いやもう夕方だし」夕焼けが綺麗な屋上で渡された包みを一旦辞退したが銀時は昼に渡せなかったからと譲らない。仕方なく弁当箱を開けた瞬間、冷や汗が噴き出した。「ハイ、オクラ納豆山芋マヨ宇治銀時丼。粘つくように離れられない俺らの愛を表現してみました☆」「……チェンジで」





























 


▽lily

告白されるなら夕焼けが綺麗な屋上で、なんて学生の頃は夢見ていた。なのに何故今俺はこんな冷や汗ものの舞台で告白されているんだろう。ハグしろだのキスしろだの粘つくような声で飛んでくる野次は無視して目の前の卒業証書を手に真っ赤な顔をした黒髪の生徒を見つめた。「…土方、お前度胸ありすぎ」






























 


▽オノセ

靴底とコンクリートの間で粘つく苺ガムが、まるでお前に「ここに居ろよ」と強請られているようだと錯覚する。足元に気をつければ良かったと悔いても遅く、見上げた視界には茜色が透ける銀髪。「土方?」こんな時に名前を呼ぶなんて卑怯だ。拳を握り締めれば、スーツの下で背筋を冷や汗が伝った。
































 


▽オノセ

綺麗だと思った。声を枯らして泣く後姿が。震える肩を抱き寄せて、もう良いのだと囁いてぐずぐずに甘やかしてやりたいのに目の前の男の矜持がそれを許してはくれない。額を伝う粘つく汗が、ただの汗なのか焦がれ伸ばせない今を憂う冷や汗なのか、銀時には分からなかったけれど、夜はそこまで来ていた。
































 


▽さおこ

強いビル風が、身体を突き抜けた。「土方さんはさ、俺が何処にいるかわからないでしょ」見つけられないよ、きっと。粘ついた声と何時もの笑顔。安っぽい金髪を夕暮れに溶かして、何食わぬ顔が隠しているもの、は。本物は何処だ。足元に広がる東京は余りにも広すぎて、言われた通り、掴めないでいる。































 


▽りんり

緊張してるの、と尋ねる己自身の咥内が粘ついて糸を引く。彼の薄い背中を迎えるのは雨ざらしの固いコンクリート。もしかして傷が残るかもしれない、手加減してあげられなくてごめんね。彼の白い頬を流れる雫は夕陽にあかく煌めいて、「ねぇ、ひじかた、」このまま空に溶けてしまおうか。































 


▽都筑刹那

瞼を覆う掌があたたかい。名残惜しそうに舌を吸われ唇を解放される。口の周りが粘つく。唾液を拭う指が優しい。勘違いしてしまいそうになる。「ひじかたくん、」覗き込む水底に夕陽が沈んでいく。その舌を噛みちぎってやればこんな不安に苛まれなかったのだろうか。伝う冷や汗に視界が霞む。






























 


▽木瀬

夏の西空、粘つき気味の橙が景色も己が身も見境なく滴り落ちる。そうだ、客観的に見たら俺は異色ではない、溶け込んで、いるのだ。息を吐き出してくるりとフェンスに背を向けるとやおら、なあんだ、身投げでもするのかと思ったぜ。嘲りをも含んだ声と、あまりに本気の視線に知らず冷や汗が首筋に滲む。
 
 
 
 



























 


▽木瀬

そもそも初めから駄目だっただろう、分かりきったことだ。それを今さら怖じ気づいたか。嫌味に粘つく声色で嘲る一方で、確かに冷や汗がじとりと首筋を湿す。今にも黒髪を焦がしそうな残照の下、男はもう嫌なんだと言いたげに笑った。唇だけで彩る表情がすとんと腑に落ちる。ああ、本当にここまで、か。




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