本気なら飛び降りて見せろよ、と言った。そこの窓から飛んで見せろよ、と黄昏に染まる窓を指した。敢えて秤にかけさせるような、しかし決してこの自分を選びはしないだろう言葉を投げかけたのにもかかわらず、目の前の少年は薄く微笑んだ。微かに動揺した心の内を見透かされたようで、少年には知られないようにしながら唇をかんだ。 こんなところから? 嘲るような声が二人きりの教室にやけに響いた。 こんなところじゃなくて、もっと高いところがいい。 整列した机をガタガタと押しのけ、少年は教室を飛び出していった。その言葉を噛み砕くよりも早く足は反射的に彼の後を追った。ばたばたと靴音が反響する。 待て、おい! 制止の言葉も虚しく背中はぐんぐん遠ざかる。背中を 伝うのは恐れからくる冷たい汗だった。見失いそうになりながらも、その姿を求めた。
駆け抜ける銀色が何段目かの階段を上り、重苦しいドアを開けた。 い、くな! 踊り場で、荒い息で粘つく喉から無理矢理絞り出した命令は、もはやただの懇願に成り下がっていた。それでも、少年はぴたりと動きを止めた。 試すなよ、先生。そんなことしなくたって、俺ァ本気だって。 そう言って生徒は、扉の向こうから差す光と同じ色の瞳で笑った。ああ、囚われた。

 

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