「うそだろ」
 寝坊したかと思って飛び起きて、窓の外をみたおれはそうこぼしていた。
 世界中の天候を決めているやつがもし神さまってやつなら一発殴らせて欲しい。
 と、朝メシを食いながら呟いたら隣のアフロディが「いやだな、殴らせないよ」なんて反応をよこすもんだから見事なデコピンをお見舞いしてやった。
 いらいらを隠そうともせずにテレビに視線をやったら、四角い画面の奥でおっさんが本日の天候についてごにゃごにゃ言っていた。
 あぁ知ってるよ。見れば分かるよ本日の天候ぐらい!
 舌打ちをしたらチャンスウがさっとテレビのチャンネルを変えた。
 突如画面に映し出された踊り狂う謎のキャラクター達に夢中なアフロディと、その保護者アフロを置いて、おれは自室へと戻った。
 本日の天候は雨。というか大雨。
 そして、今日は元々練習が無かった。
 約束してたのだ。風介と。
「…あー…」
 ベッドの上で何度も寝返りをうつ。それでも外の景色は変わらない。大雨だ。
 ちなみに昨日、テレビの奥のおっさんは「明日は雲一つない快晴でしょう」なんてほら吹きやがった。一体何人の人がその虚言に踊らされただろうか。神さまの前にあのおっさん殴りてぇな。
 柄じゃないって分かってるけど、風介とデー……出かけるの楽しみにしてたのに。
 あ、そう言えば今日まだ一回も風介に会ってない。
 そんなことをぼんやりと考えていたら、枕元のケータイが鳴り始めた。
 空気の読めないケータイだな。アフロディだったら無視してやる。そう思いながらサブディスプレイを覗きこむと、そこには『涼野』の文字。
 あ、まだ『風介』に書き直してねぇ……じゃなくて。
 はぎ取るみたいにケータイを取り上げて、通話ボタンを押して耳元に当てる。
「もしもし風」
『遅い!一体どれだけわたしを待たせるつもりだ!!』
「は?え?」
 別に通話ボタン押すのにそこまで時間かかんなかったんだけど。
『違うそうじゃない』
 え?なにコイツ通話相手の心の中の呟きまで聞こえんの?こわっ。
『ともかく晴矢。君今何時かわかってるの?』
「え、えと。今九時十七分」
『そうだよ今は九時十七分三十六秒!じゃあ待ち合わせ時間覚えてる?』
「……え…待ち合わせって…」
 待ち合わせって、今日のデー……外出の。
「九時…?」
『そうだよ。君、わたしを十七分も待たせているんだよ』
 ……なんだこれ。
『いつまでも寝てないでとっとと準備してきなよ』
 電話は一方的にブチられた。
 窓の外を一度確認してからケータイをポッケに突っ込んで、おれは部屋を飛び出した。
 窓の外はまだまだ雨だった。風も強かった。
 それでも、宿舎の扉を開ければそこにやつはいた。
「………なんで?」
「なんで?はこっちの台詞だね。この早とちり」
 そいつはいつもと変わらない飄々とした表情のまま言った。
「晴矢、今日は雨天決行だよ」
 いつもと変わらないようで、だけどいつもより少し優しい目をした風介が、ムダにカッコよく見えて思わずむず痒くなった。
「……風邪ひいても知らねぇから」
「その時は君も一緒だよ」
 誰が看病するんだよ。だけど、雨の日に2人で出かけるのも悪くないなと思う。
 傘を叩く雨音は、少しずつ、ほんの少しずつ小さくなっていった。




end











ぷちおまけ
「チャンスウぼくらもデートしようよ!」「あなた病み上がりだからダメです」

久々だぁあ。風晴かわいいよ



2011/04/23 21:12
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