会話文
鬼道クンに抱きしめられた…いち。鬼道クンが頭を撫でてくれた…に。鬼道クンがほっぺにキスをしてくれた…さん。
…不動。
鬼道クンが手を握ってくれた…よん。鬼道クンが恥ずかしがりながら好きって言ってくれた…ご。鬼道クンが手を離した……よん。鬼道クンが、
不動、聞いてるのか。
あ、本物の鬼道クンが来てくれた…ご。
さっきからなんなんだ?その数字は。
なんだと思う?…鬼道クンが話しかけてくれた…ろく。
さっぱり分からないな。
ふーん。…鬼道クンがおれの話しを理解してくれない…ご。
何故下がったんだ?
なんででしょーか。…鬼道クンはまだおれに興味があるらしい…ろく。
…嬉しいと思った数?
お、惜しい。けど模範解答じゃないとね。…鬼道クン惜しい…なな。
じゃあ、模範解答を教えてくれないか?
仕方ねーなぁ。…鬼道クンは自力で解けなかった…ろく。でも最後まで飽きずに聞いてくれた…なな。
飽きるわけないだろう。
……ありがと…はち。…これは幸せの数だよ鬼道クン。おれは幸せをかぞえてるんですよォ。
嬉しいと思った数じゃダメなのか?
ダメ。名前が違うもんよ。
そうなのか。わかった。覚えておこう。
おう。覚えておけ。
不動、そのノートはなんだ?
なんでしょーか。…鬼道クンがこれに興味を持った…きゅう。
それも当てないとダメなのか?
もちよもち。
幸せを書くノート?
おぉ!まぁ合格だな。鬼道クンがこれの名前をちょっと当てた…じゅう。
ちょっとなのか。模範解答は?
ん?幸せを残すノートだよ。…鬼道クンが最後まで飽きずに聞いてくれた…じゅういち。
書くじゃダメなのか?
ダメに決まってんだろ。
何が違うんだ?
おれは幸せを書きたいんじゃねーの。残したいの。おわかりですか?
…わかった。覚えておこう。
ん。今日はなんだか気分がいい…じゅうに。
不動、
ん?
愛してるぞ。
…ッ!!!?
…今のは幸せの数にカウントされないのか?
あ、じゅうさん。…鬼道クン、おれも。
ありがとう。
幸せを残すノートはボロボロなのに記入するページはまだまだ初めのページだった。何度も何度も破り捨てた痕が残っていて、紙面もボコボコしていて使いづらそうだった。だからいつか不動が、幸せを残す必要がないと思うまで、おれが側にいることが当たり前になるまで、不動を幸せにしてやりたいと思った。それから先は、幸せの数が、存在する数字のむこう側へと飛び出して行って、数えることすら不可能になるくらいには、一緒にいてやりたいと思った。
幸せを数える不動が、とても幸せな笑みを浮かべていたことを、おれは死ぬ瞬間まで忘れられそうにない。
end
幸せを数えるあきお。
2011/04/04 16:09
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