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 家に帰ると今日も灯りがついていた。
 こみ上げてきた嬉しさと安堵感に促されるままに靴を脱ぎ捨ててリビングへ走る。
 勢いよくドアを開けると、ソファに座り込んで本を読む源田がいた。
「ただいま、源田」
 バックを投げ捨ててそう言うと、源田はこちらを見もせずに
「腹減ったからなんか作れ」
 と言った。
「わかった」
 本当は源田の方が料理は上手い。おれの作ったものなんて、源田に比べたら生ゴミみたいなものだ。でも、源田はおれの料理を食べてくれる。それだけでも嬉しい。幸せなんだ。
「なに食べたいの」
「なんでもいい」
 得意料理なんてひとつもないけど、源田が毎日食べてくれるなら、どんなものでも作るよ。
 食材を探すために冷蔵庫を開ける。今朝となにも変わらない食材達。あぁ、今日源田は出かけてたのか。
「今日、どこ行ってたんだ」
「鬼道達と遠出してた」
「ふぅん…」
 これはおもしろくない。源田が鬼道達と出かけたことじゃない。そのことを正直に言われたことだ。
「源田」
 返事がない。けど、聞いてくれてるだろう。だから続ける。
「これからはさ、もし本当でも出かけたって言わないで。嘘ついて。『ここでおまえをずっと待ってた』って」
 返事がない。けど、聞いてくれてただろう。だって源田だから。
 色々と手のこんだ野菜スープから、食欲をそそるにおいがして、つい腹が鳴った。
 さすがにおれひとりの給料で、毎日三食二人分はさばけない。だからおれの食事は1日一食昼飯だけ。源田は三食。残りは全部源田のお小遣い。
 でも平気なんだよ。源田がそばにいてくれるなら。命だって差し出せる。
「源田、飯出来たぞ」
 ご飯、スープ、肉、サラダ。お盆に乗せて、源田の元へ。
 食事は一人分。でも、源田が食べてる姿をこんなに近くで見れるだけでも幸せなんだ。
 美味いとも、不味いとも言わずに黙々と飯を食う源田。
 目の前に頬杖をついて座るおれ。
 あぁ、なんて幸せなんだろう。一緒にいられるだけでこんなにも幸せになれるなんて、なんて源田はステキな人なんだ。
「源田、ひとつお願いがあるんだけど」
 返事もないし、源田の箸は止まらない。けど、続ける。
「愛してるっていって」
 ピタリ、源田の箸が止まる。
 顔を上げて真っ直ぐにこちらを見る源田の目は、濃く軽蔑の色を映していた。「おれは、おまえと嘘だけはキライだ」
「そう…」
 残念だ。おれは源田のためなら損することも嘘吐かれることも構わない。大歓迎だ。
「分かったら向こうへ行け。不味い飯がもっと不味くなる」
 リビングを追い出される。
 そんな罵りだっておれには嬉しい限りだ。
 幸せだよ源田。今日はもう寝るよおやすみ。




end












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やりすぎた感が否めない



2011/03/26 11:14
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