※短め
※暗い病み
※死ネタ?
「信じてたんですけどねぇ」
ホントに残念ですよ、と言う成神は実に楽しそうに血のついたハサミを撫でる。その目は笑っていない。
「おれ、先輩のことだぁいすきですよ? 今だって、ほら」
何がほらだ。ハサミで撫でられた頬に血がつく。頬がわずかにチリリと痛んだ。
「大好きです先輩。ねぇ、先輩もおれのこと大好きですよね」
お前なんて大嫌いだ。
声は出なかった。出す気力なんてもうない。
それでも成神には伝わったらしく、ヤツはスッと笑みを消すと、ハサミの刃をおれの肩に押し当てて、強く引いた。
残念だったな成神。感覚なんてとうに麻痺しちまって、痛みなんて微塵も感じねぇんだよ。
「先輩痛そう」
ぽつりと呟く成神の顔は、気味が悪いほどに無表情。
誰が痛くしたんだよばーか。
「先輩、戻ってきてくださいよ」
成神がしゃがみこんで、おれの目を覗き込む。
「あんなブス女なんかよりおれの方がいいですよ」
かつんと音がして、そちらに目を動かすと、成神がハサミの先を床についた音だった。
「先輩の目、きれい」
子供みたいに笑いながら、成神は続けた。
「おれ、先輩のこと、大好きです。愛してますよ。だから、ねぇ。だから先輩…」
成神がハサミを投げ捨てる。ガランガランと耳にうるさい。
「愛してるって…、もう一度」
成神の目を見て思う。
あの頃のような成神は、もう見れないんだろう。
純粋におれを慕って、好き、とか、そんなこと笑顔で言ってくれてた成神は、もういない。
すっかり狂ってしまった。
おれが、成神を壊してしまった。
いつからだろうか。最初からかもしれないな。
そんなことを考えてたら、目の前が真っ赤になった。
「ね、先輩。愛してるって言ってください…。早くしないと、おれも、あなたも死んじゃいますよ?ねぇ、お願い…」
お願いって。
もう手遅れだ、ばかやろう。
end
リハビリ。
ホントごめんなさい
2011/03/19 18:45
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