※年齢操作で高校生で同じ学校パラレル














「ホラ、ちゃっちゃと支度しやがれ!あぁもう遅刻すっぞ!!」
 わたしの支度を手伝いながら、晴矢が喚き立てる。
 何故こんな新婚さんみたいな状況なのかと言うと、まぁ理由は簡単。わたしが寝坊したのだ。
「のろのろしてんじゃねぇ!いつもならもう学校ついてんだよ!」
「ん…?今何時だ?」
「八時十八分だバカ!」
 晴矢が冷蔵庫の取っ手を乱暴にひっつかんで開けた。人の家の冷蔵庫を乱暴に扱うな。壊れたらどうするのだ。
 彼は苺ジャムを取り出すと、ガシガシと食パンの表面に塗りつけて、丸めたそれをわたしの口につっこんだ。
「む…はふは、ほへははーはふぁい」
「うるせぇ!我が儘言ってんじゃねぇ!!」
 ほう。わたしが何を言いたいのかが分かるなんて、流石はわたしの恋人だ。
「…おめぇ、今変なこと考えただろ」
「ひあ、ふぁんはえてない」
 苺ジャムを冷蔵庫にしまった晴矢が、時計を見てからわたしの腕をぐいと引っ張った。
「間に合う気がしねぇが、もう行くぞ!!」
 晴矢に引っ張られて玄関を出る。そして、家の鍵を閉めながら、ふと思い出す。
「…あー、晴矢。その」
「んだよ。忘れ物か?」
 自分の自転車に跨りながら、晴矢が言った。
「そう言われれば、忘れ物に分類するだろうが…」
「ぐだぐだ言ってねぇでハッキリ言え!」
「では、ハッキリ言わせて貰おう。自転車が無い」
「……は?」
 晴矢が目をひん剥いた。
「いや、昨晩、自転車でコンビニに行って、何故か歩いて帰って来てしまった」
「なにしてんのお前!!マジ意味わかんねぇ!頭いいのにホンットバカ!」
「よくあることだろう?」
「ねぇよ!ふざけんなマジで!あぁったく!!」
 晴矢は頭を抱え込んでなにやらぶつぶつ言っていたが、ふと、何か決心したようにこちらを向いた。
「めっちゃくちゃ気が進まねぇけど、ほら!」
 パンパンと、晴矢が自分の自転車の荷台を叩く。
「えっ…と、」
「いいから早く乗りやがれ!!置いてくぞ!」
 おぉ…、これは。予想外だったが、ちょっとだけ自転車が無くて良かったと思ってしまう。
「わたしが漕ごうか?」
「いい!から、はよ乗れ!!」
 鞄を無理矢理籠に押し込めて、荷台に跨る。
「晴矢、ケツ痛い。座布団かなんか無いか」
「ガタガタ言ってると下ろす。ほら、進むぞ!!」
 晴矢が思いっきり漕ぎ始めるものだから、わたしは慌てて晴矢の腰に手をまわした。相変わらずいい腰だ。
「おいっ!風介!!てめぇ変な触り方すんなキモイ!!」
「んー?別に変な触り方なんてしていないぞ」
 ビュンビュンと耳元で風が唸る。晴矢、結構力あるじゃないか。
 住宅街を抜け、後は学校まで一本道だ。その一本道は土手の上にあり、右手には田んぼ、左手には大きな川が流れている。
「学校見えてきた!!」
 今まで立ち漕ぎしていた晴矢が、スピードを落として、サドルに腰を下ろした。
「今何分!?」
 晴矢が声を張り上げる。
「二十九分だ」
 四十分までに席につけばいいのだから、まぁ、余裕だろう。気を抜いて背筋を伸ばした晴矢の首もとが、ふと目にとまった。あぁ、これ。一昨日の夜の。
 急に興味をそそられて、右手をゆっくりと上げて、晴矢のうなじを撫でてみた。
「つっ!!!?」
「うわっ、」
 そこからは、何もかも一瞬のことでよく分からなかったが、唯一言えることがある。あぁ、土手から落ちたな。
 緑の草の上に転がるわたしと晴矢。そして、その先の河原の砂利の上に転がる自転車。少し目を動かすと見えてくる青い空。今日が晴れてて良かった。
「サイアクだ…」
 体を大の字にした晴矢がポツリと呟く。
「…晴矢、思い出さないか?昔二人で遊びまわって、草原に寝転んだあの日々を」
「イヤでも思い出すわバカヤロー。はぁ、遅刻決定。サイアクだ」
 まぁ、いいじゃないか。こんな日があっても。そういうと、晴矢はむくりと起き上がり、心底疲れた、といった様子でこっちを見た。
「第一に、何もかもお前のせいなんだからな。寝坊したことに始まり、自転車を忘れ、最終的にはセクハラかよ!」
「目の前に恋人がいるんだ。セクシャルハラスメントの一つや二つ…」
「時と場をわきまえやがれ!!」
「仕方ないだろ。あと、首にキスマークついてるぞ。まぁ、あながち一昨日のアレだろうが」
「は!!?」
 晴矢の顔がみるみるうちに赤くなる。全くいつ見ても可愛いヤツだ。
「……だから昨日、茂人達の目があんな…、…サイッアクだ」
 自分ひとり寝転がっているのもなんだし、起き上がって伸びをする。
「晴矢、サボろうか」
「え?」
 わたしが言うと、晴矢はきょとんとこちらを見上げた。
「どうせだし、このままどこか行こう」
「…優等生のくせに」
「優等生だからだよ」
「ハッ、意味わかんね」
 晴矢が笑う。学校をサボって、二人でどこか行こう。
 たまにはこんな日もいいだろう?












おまけ
「夏彦。あれなに」
「あぁ、あれかい。アレはね『遅刻しそうでニケツしてたら土手から落ちてそのまま学校をサボって寝たまま一日過ごしてしまったバカップル』さ」
「………起こさないでいいのか」
「オレはイヤだね。茂人行きなよ」
「オレだってイヤだ」
「じゃ、ほっとこ。いずれ目覚めるさ」
「……」





end












自転車でコンビニに行って、何故か歩いて帰って来てしまったのはわたしです←
ちなみに、『はふは、ほへははーはふぁい』は『晴矢、これバターが無い』っていってます←←



2011/02/20 18:01
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